宮城県・仙台のIT企業 トライポッドワークスは4月25日、同社の製品や技術の最新動向と事例を紹介する「Tripod Partner's Day 2012」を都内で開催し、佐々木賢一社長が製品開発戦略について語った。
同社はセキュリティ領域を中心に、大学などの技術的基盤と連携しながら新たな技術の製品化を図っている。また、韓国のベンダーと連携して新たなソリューションを国内市場に提供している。
「仙台」のメリットを最大限に発揮
トライポッドワークス 佐々木賢一社長
トライポッドワークスは2005年に設立されたベンチャー企業で、セキュリティソリューションと先端技術開発を事業の主要な柱としている。佐々木社長は「ローカルの強みを生かしたグローバルな事業展開」が経営方針の基本であると話す。
また、「仙台ほどの規模の場合、いわゆるIターンやUターンを志向する人々が少なくないが、その受け皿が十分とはいえない。そこで、仙台にある会社であれば“戻ってくる”ことを望む優秀な人材を確保できるという点で有利になる。また、東北地方には、東北大学だけでなく技術系の公立大学が複数あり、さまざまな技術連携ができる」とローカルの強みを挙げた。
グローバルという点では「韓国の企業とかなり深い協業をしている」ことが特徴。韓国企業は、サムスン電子やLG電子などが、携帯電話やテレビといった分野で日本に進出しているが「まだまだ国内に入ってきていない部分が多い」という。なかでも「セキュリティ関連の企業は優れている。韓国の場合、コンピュータへの不正アクセスや攻撃による被害が大きくなっていることが背景にある」とする。
同社はこの点を評価し、サムスン電子グループのセキュティベンダーであるSECUI.COMとUTM(統合脅威管理)「SECUI NXGシリーズ」を、JiranSoftとオンラインストレージ「GIGAPOD」やメールセキュリティ製品「MAILSCREEN」を共同開発した。
同社のセキュリティソリューション事業では、主として中小企業向けにオンラインストレージやWebフィルタリング、UTMなどの製品を提供している。オンラインストレージのGIGPODは1200社、UTMのSECUI NXGシリーズは4000社に納入しているという。
佐々木氏は「企業の従業員は、セキュリティは会社のためのものと理解していても、使いづらいと感じている面もあるようだ。しかし、セキュリティがあっても働きやすい環境にできる快適なソリューションを提供していきたい」とする。
「日本市場に適合した製品とサービスの提供も同社が重視している点だ。「UTMの場合、米国製が非常に多く、日本の商習慣になじみきっていない側面もある。我々は国内の状況によくなじんだ製品をつくっていきたい。ユーザー特有のニーズにも耳を傾け、それらを真摯に取り込んでいく」考えだ。
先端技術開発では、「大学・研究機関の研究ニーズと企業のビジネスニーズをマッチングさせる技術の開発」が基本だ。最近ではモバイル嘗紋認証システムの例があるという。指紋と同じように、人によって異なる手のひらの皮膚の隆起線を用いて個人認証を行うシステムだ。たとえば、スマートフォンの内蔵カメラに手のひらをかざすだけで個人認証が可能になる。同社は、東北大学の画像マッチングアルゴリズムとKDDI研究所のバイオメトリクスの開発テーマをマッチングさせるため、プロトタイプを開発した。
また、東北大学の画像処理アルゴリズムと鹿児島県医師会の離島向け緊急医療ニーズをマッチングさせた遠隔緊急医療向け画像転送ソリューションの事例もある。離島の多い鹿児島県では、緊急治療を要する患者をMRIやCTで検査しても、画像を読める医師が離島にいないこともある。その場合、遠隔地の病院に画像を送信しなければならないが、大容量のMRI/CT画像を転送するのは時間がかかる。そこで、このソリューションを利用すれば、画像を圧縮して迅速に送信することが可能になるという。これは医療画像転送ソリューション「Med.i.Compressor」として製品化されるという。
佐々木氏は「今後、ビジネスコミュニケーションを円滑にするための、セキュアで快適なITソリューションを提供するとともに、モバイルやSNSを用いた企業向けソリューションを開発する。また、画像処理やセンサー技術を利用した組み込み技術を活かし。医療や農業分野にも展開していきたい」としている。