ソニーが有機ELテレビで主要ターゲットとしているのは、コンシューマー向けの大型テレビである。グローバルでもっとも厳しい個人向けテレビ市場において、商品を付加価値型製品として投入するのが有機ELビジネスの基本戦略である。この点では、先行するサムスンとLG電子の方向性と同じであり、薄型ならではの特徴を生かしたデザインを追求することで、家庭における新たなテレビ需要を想定している。
これに対してパナソニックは、現在実行中のテレビ事業およびパネル事業の構造改革でも明らかなように、有機ELパネルにおいても非テレビ事業への展開が中心となりそうだ。
液晶パネルでも生産量の50%以上を非テレビ向けとするように、有機ELが持つフレキシビリティを生かしながら、デジタルサイネージなどへの応用を想定したビジネスを目指している。
つまり、テレビ用途を目指すソニーと、非テレビ用途を想定するパナソニックというように、基本戦略には大きな違いがあるのだ。
この方針の違いは、両社の提携の壁になる可能性がある。
というのも、テレビ用途と非テレビ用途では、製品化のスケジュールやパネルの仕様、優先される技術内容などが異なり、量産化に向けては双方の意見を摺り合わせる必要があるのだ。
「なにを優先するのかといった点で双方の意思が統一されなければ、思い通りの成果が出ない。むしろ足かせになる可能性もある」という関係者の指摘もある。
だが、両社には手を組まざるを得ない大きな理由がある。
それは、有機ELパネルの生産拠点への設備投資に踏み出すには大きなハードルがあり、パートナー戦略が不可欠であるという点だ。