ソニーは、2011年度業績でテレビ事業が赤字となり、これで8期連続の赤字を継続している。さらに、2012年度も800億規模の赤字見通しとなっており、赤字は9期連続になる。韓国サムスンとの液晶パネル生産のS-LCDの合弁を解消し、構造改革に弾みをつけているところであり、新規の生産拠点への投資は考えにくい。
また、パナソニックも、2011年度には1000億円規模のテレビ事業の赤字を計上。パネル事業では2012年度第4四半期単独での黒字転換を見込み、通期の黒字化は2013年度になる計画だ。黒字化転換のために、液晶パネル工場を2拠点から1拠点に、プラズマディスプレイパネル工場を3拠点から1拠点に集約した段階であり、やはり有機ELパネルのために新たな生産設備に投資することは現実的ではない。
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事実、パナソニックの大坪文雄社長は、「これまでの液晶テレビ、プラズマテレビでの経験を生かすのならば、有機EL事業において、すべてを自前でやるという可能性は低い。ベストパートナーと組んでいくことになる」と語る。
つまり、有機ELの量産という点では、両社ともに提携戦略を前提にせざるを得ない。その点では両社の足並みが揃っているのだ。
もうひとつ、両社の思惑が一致している部分をあげるとすれば、それはグローバル市場において韓国勢に対抗するという位置づけである。有機ELテレビで先行する韓国2社への遅れを取り戻すには、ソニーとパナソニックの2社の協業は最適なものといえる。
対外的な課題解決という意味での協業では両社の思惑は一致する。しかし、技術の統合や、量産化に向けたコストメリットという内的な要因では、足並みが揃いにくい。
この難しいバランス感覚を、両社がどうやって決着をつけるのか。それが、この提携が現実のものになるかどうかのポイントになる。
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