IDC Japanは7月3日、コラボレーティブ/コンテンツ管理アプリケーションとミドルウェアの利用実態調査の結果を発表した。調査は3月に実施した。
2012年度のIT施策と関連するIT戦略テーマをみると、「ITコストの低減」「ビジネスプロセスの効率化(業務効率の向上)」「社内における情報共有や知識の活用」「既存システムのサービスレベルの向上」「システムのセキュリティ対策」となっている。
ビジネスプロセスの効率化については「業務効率の向上と販売費」「一般管理費などの業務コストの低減」という2つの選択肢を用意すると、「業務効率の向上」に回答が集中する結果になっている。

こうした外部環境の中でグループウェアなどのコラボレーティブソフトウェアについては、ハードウェアやソフトウェアの追加的な購入費用を抑え、システムの運用管理負担を軽減したいと考える企業を中心に、戦略的なSaaS/ASPへの移行ニーズが高まっている。移行についての検討状況をみると、SaaS/ASPに移行したいという回答は24.8%になっている。
ソーシャルソフトウェアを利用している、あるいは利用を計画している企業の多くが、顧客とのコミュニケーションへの活用に期待を寄せているという。だが現状は、機密情報の漏洩などのリスクに対応するための施策を実施できている企業はごく一部に限られるという結果も明らかになっていると説明する。
今後、ユーザー企業は、このようなリスクを抑えつつ、業務効率向上を目指す中で、ソーシャルソフトウェアのリアルタイムな情報共有の仕組みが統合されたコラボレーティブソフトウェアを、従業員同士あるいはパートナー企業とのコミュニケーションに利用する動きが活発化していくとみている。
ビジネスプロセスの可視化を伴うビジネスプロセス管理(BPM)製品の導入やアプリケーション共通基盤の構築についての調査では、BPM/アプリケーション統合プロジェクトを実施済みと回答した企業は少数派だが、その大半は2010年以降にプロジェクトを完了、新規事例が増加傾向にあるという。属人的な業務のやり方からの脱却が進み始めていることの表れとし、今後の市場活性化が期待されるとコメントしている。
IDC Japanの冨永裕子氏(ソフトウェア&セキュリティシニアマーケットアナリスト)は「コラボレーティブ/コンテンツ管理アプリケーションとミドルウェアの利用状況を見ると、成熟している製品分野ではコスト低減の観点からSaaS/ASPへの移行やオープンソース製品の活用が進んでいる。成長分野では、業務効率改善のためのBPMが挙げられる」と説明する。
冨永氏は続けて「これらは損益計算書で結果が見える技術や製品の分野という点で共通するが、積極的に活用できているユーザー企業は一部にとどまる。市場を活性化させるためには、ベンダーは既存システムの維持に専念してきたIT部門とユーザー部門の対話を促進させる必要がある。短期的な製品導入よりも、ユーザー企業が抱くセキュリティや経済への懸念事項を払拭し、製品導入のための土壌を整備することが課題」と提言している。