日本マイクロソフトは7月17日、米本社CEOのSteve Ballmer氏が発表した次期Officeのカスタマープレビュー版を国内向けに説明する記者会見を開催した。タッチ、ペン入力、マウス、キーボード操作に対応し、オンライン会議などを含めたソーシャル機能を強化。全体としてWindows 8との親和性を高めた。「全機能はクラウドサービスを通じて最新の状態で提供される」としている。
先日、Microsoftがカナダのトロントで開催したパートナー企業向けイベント「Worldwide Partner Conference 2012」(WPC)でも、頻繁に話題に上がったのはOfficeだった。Officeをクラウド形式で提供する「Office 365」の販売方法として、新たにパートナー自身がエンドユーザーに請求書を発行できる「Office 365 Open」を開始すると発表。Microsoftのパートナー企業がOffice 365のビジネスでこれまでよりも収益を上げやすくなるのではないかとして、パートナーは概ね歓迎した。
WPCの最終日、パートナーとの懇親会で話す樋口社長
WPCの最終日には日本マイクロソフトが国内のパートナーを集めたパーティを催し、樋口泰行社長がOffice 365の新たな販売形態の発表について触れ、Officeを含む同社製品の販売にパートナーの後押しが不可欠であると強調した。
Microsoftが収益の柱と掲げるこのOfficeについて、7月17日の会見で発表されたのは、これまで開発名で「Office 15」と呼んでいた次期Officeのカスタマープレビュー版。具体的には、個人向けの「Office Professional 2013プレビュー」、中小企業向けの「Office 365 Small Business Premiumプレビュー」、エンタープライズ向けの「Office 365 ProPlusプレビュー」および「Office 365 Enterpriseプレビュー」の4種類の提供を開始した。
Officeビジネス本部の本部長、ロアン・カン氏
日本マイクロソフトでOfficeビジネス本部の本部長を務めるロアン・カン業務執行役員は会見で、オンライン版であるOffice 365が「SharePointを抜いて、歴代のMicrosoft製品で最も速く成長している」と説明。次期Officeの特長について「クラウド、デバイス、ソーシャル、管理」という4つのキーワードを用いて紹介した。
この中で、「クラウド」に関して特徴的な機能は、どのバージョンでもデータの保存先がクラウドである点。コンシューマー製品では「SkyDrive」、企業向け製品では「SharePoint」に保存する。また、保存先としてのSharePoint(Online)は「SkyDrive Pro」に名前を変える予定だ。オフラインでも文書を利用でき、オンラインになった時点でクラウド上にある文書と同期を取る。
このほか、Officeにサインインすることで、デバイスを問わず最新の文書と個人設定にアクセスできるローミング機能、フル機能のOfficeアプリケーションをインターネットに接続したWindows 7/8の稼動PCにストリーミング配信して使えるようにする「Office オンデマンド」もクラウドの新機能だ。
「デバイス」については、Windows 8との親和性を高めている点を挙げた。スワイプやピンチ、ズームといった一連のタッチ操作や、デジタルペンを使ってコンテンツを作成できるインク機能、Windows 8のスタイルを持ったOneNoteやLyncといったアプリケーションを搭載している点が特徴という。
Excelの新機能がデモで紹介された
また「ソーシャル」機能では、先日買収を発表した企業向けソーシャルネットワークの「Yammer」や、社内でのコミュニケーションプラットフォームである「SharePoint」、インターネット電話のSkypeなどをOfficeから使えるようにする。
「管理」面では、企業内の機密情報を誤ったあて先にメール送信することを防ぐデータ損失防止機能などを組み込んだ。
カン氏は、日本航空では約2万人が利用するコミュニケーション基盤としてOffice 365を採用したことなどを紹介しながら、Office関連ビジネスについて「Lyncの導入顧客数が昨年比4倍増、SharePointのライセンスが過去10年連続で二桁パーセント成長している」とアピールした。
この日行われたデモでは、次期Officeにおける細かな改善点などが紹介された。Excelでは、入力しようとするデータを入力済みデータから予測したり、ピボットテーブルが作成しやすくなったりしている。