シマンテックは7月20日、「企業が保有する情報に関する調査」(英語版)の結果を発表した。グローバルと日本の比較も行っている。
世界と比較して割合は低いが、回答した日本企業の4割近くが情報損失を、5割が機密情報の流出を経験している。日本企業は世界と比べて、情報損失は、ブランドや評判に対する影響よりも、顧客喪失や収益減少といったビジネスへの直接的損失に対する影響が大きいと考えていることも明らかになっている。
シマンテックは調査結果から、世界中の企業が情報に費やすコストが年間1兆1000億ドル、日本円にして88兆円であると試算している。企業は顧客の機密情報をはじめ知的財産や金融取引など大量の情報を保有している。
こうした情報は、企業の競争力と効率性を維持している。事業継続性という点でも情報を欠かすことができない。調査では、情報によってもたらされる価値が、海外企業では自社の総価値の49%、日本企業では30%を占めていると回答している。
全世界の企業が格納している情報は現在、2.2Zバイトであることも試算されている。回答企業のうち平均的な中小規模企業(SMB)は563Tバイトを所有、平均的な大規模企業で10万Tバイト、つまり100Pバイトを所有していると説明する。今後1年間の情報の増加予測では、大規模企業で67%、SMBで178%という結果だ。
情報に対して費やす年間コストは全世界平均で大規模企業で3800万ドル(日本円で30億4000万円)、SMBで33万2200ドル(同2656万円)となっている。従業員1人あたりの年間コストで見ると、SMBで3670ドル(同29万3600円)に対して大規模企業は3297ドル(同26万3760円)と、SMBの方が多い。
例えば、従業員50人の企業は情報管理に18万3500ドル(1468万円)を費やすが、従業員2500人の企業だと820万ドル(同6億5600万円)を費やすことになる。
調査に回答した企業は、情報の損失がビジネスに深刻な結果をもたらすと認識していることが浮かび上がっている。情報損失がビジネスに影響する項目として日本企業が挙げているのは「顧客喪失(61%、世界では49%)」「収益減少(51%、世界は41%)」が上位を占めている。
一方で「評判やブランドのイメージ(35%、世界は47%)」「株価暴落(13%、世界は20%)」という結果だ。日本企業は海外企業と比べて、情報損失は、評判やブランド、株価という間接的損失よりも、顧客喪失や収益減少などのより直接的損失に影響があると考えている。
調査では、日本企業の39%が情報損失を経験していることが分かっている(海外企業は69%)。その理由は人為的ミスやハードウェア、セキュリティ違反、端末の紛失や盗難などさまざまだ。日本企業の50%が機密情報を外部に流出し(海外企業は69%)、14%で情報関連のコンプライアンス違反を経験している(海外企業は31%)。
調査では企業が格納している情報の重複も課題になっていることも明らかになっている。日本企業で平均43%のデータが重複(海外企業で42%)しているという。
ストレージの利用率も低いという。データセンターやバックアップ、アーカイブ、デスクトップPCのようなファイアウォールの内側にあるストレージの利用率は30%(海外企業で31%)、パブリッククラウドやノートPC、スマートフォン、タブレットなどのファイアウォールの外側にあるストレージの利用率は16%(海外企業で18%)となっている。
爆発的に増大する情報は、構造化されておらず、アクセスが困難で多くの場合で重複しやすい傾向にある。調査に回答した企業は、情報保護の非効率性で必要以上のコストを費やしていると認識。日本企業の17%、海外企業の30%が、情報の無秩序な広がりが大きな課題と意識していることも分かっている。
調査は2~3月に36カ国の従業員5人から5000人以上の企業4506社が対象。日本企業は200社、日本企業の回答者の85%が経営幹部レベルや上級管理職、そのほかはIT担当者となっている。