エンタープライズIT「アーキテクチャ」の真髄(後編)
(編集部より:企業としてITをどのように位置付けるべきか――。その課題を突き詰めていくと見えてくるITの姿は、インフラ、装備、設備という3つになるようです。あわせて前編と中編もどうぞ)
ITを作る上で大切なこと
「部長、大事な議論が残っています。部長が、仮想化に本当に乗るべきか、SOA(サービス指向アーキテクチャ)に本当に乗るべきか、ということを先ほど仰っていましたね。申し上げておきたいのは正直、今の技術の進歩の流れで、10年後にはもっと凄い技術ができているかもしれませんが、進化の形として正しい方向だと個人的には思っています。ITというのは、分散と統合を繰り返して進化してきていると思っています。メインフレームからオープン系やPCへという分散の流れ。個別業務から戦略的情報システム、ERP(統合基幹業務システム)などの統合の流れ。ネットセントリックアーキテクチャというのもこの統合の流れかもしれませんね」
「うんうん」
「仮想化であったり、SOAであったりというのは、ハードウェアを統合して効率的に使っていこう、アプリケーションを統合して効率的に使っていこうという統合の流れと、ハードウェアはハードウェアとして分散して使っていこう、共通的な機能はそれとして分散して独立させて使っていこうという分散の流れにも乗っているとも思っています」
「それ、アナリストもそう言っているの?」
「いえ、どちらかというと、アナリストが言っていることを理解しようとすると、こういう考え方が成り立つということです」
「そう」
「そういう中で大切なことは何だと思います?」
「データだね」
「その通り。データだと思います。データだけではなく、文書情報までを総合した“インフォメーション”ですね。結局のところITとは、Information Technologyの略です。テクノロジは変遷するんですけど、テクノロジを変遷させた結果として扱えるインフォメーションを増やしているということです。そして、インフォメーションは企業の中にもともと存在するもの、存在しているものであって、それは企業にとっての重要な資産であることに変わりはありません。このデータをいかに上手く、自分たちの資産として上手に再利用できるように管理をしておくか。これが、最も重要なことになるんだと思います」
「うん」
「現代の主流は、仮想化であり、SOAであり、さまざまに多様化するコミュニケーションを支援するテクノロジでしょう。でも、この進化の方向性に乗ることを避けることはできません。これらの技術は、このインフォメーションを大切に扱う技術だと思っています。ですから、当面はこの技術に乗っていくことは、部長の企業の100年の計として見ても、最も重要な資源であるインフォメーションを守り抜くことに繋がると言えるんではないでしょうか」
(電話が鳴る)
「あ、電話ですね。この部屋、出ろってことですか」
「そうそう。もう出なきゃ」
「部長、時間あります? ちょっと言い足りないことが」
「あぁ、いいよ。ちょっと、まとめた方がいいかな」
「そうですね」
(喫煙ルームに移動)