「今日の話の中で、InfrastructureとEquipmentとBusiness Platformの話をしたじゃないですか。それを作るときに、どのように位置付けるかと。まずはこれが一つで、どこに注力を入れ、どこを伸ばすか。これは、業務の中のどれを一生懸命伸ばすかということです。これを僕たちは“構成”と呼んでいます」
「うん。確かに、Infrastructureが大切な企業もあるし、Business Platformが大切な企業もあるだろうね。でも、ウチの場合には、Equipmentかな。ここだろう」
「そうです」
「そうなると、Infrastructureには余りお金や人材をかけるのではなく、必要なインフォメーションが揃って、管理できればいいってことだね」
「ええ。それを、どうやって作っていくか。これを、僕たちは“構造”って呼んでいます。普通アーキテクチャとか言うんですけど、どうもピンと来ないので、構造と呼ぶようにしています」
「うん。構成というのが家にとって間取りで、構造がその建て方って言いたいのかな?」
「えぇ」
「そうだとすると、構造はなるべくモダンな方がいいってことだね。その本質であるデータは、極力長持ちしていつでも他の技術に乗り換えられるように、分離させて管理できるようにしていくってことかな」
「そうですね」
「じゃ、ウチの場合は、カネとヒトをかけないように各種Infrastructureを整える。ま、ERPを軽量化することが第一で……。Equipmentはまだ遅れているから、ひとまずは、海外を真似するところから始めて、5年後には海外を追い抜こう。そして、最後はそれを、データじゃなかった、インフォメーションを自分の資産として使い続けることができるような、テクノロジを選んでいけばいいんだね」
「そうですね」
「で、そのあたりのレベルを決めていこうとすると、ヒトの問題とカネの問題を避けて通ることができないね。それが、次回?」
「えぇ。そうしましょう」
「じゃ、宮本くん。悪いけど、次回も頼むね」
何を重要視するのか
「わかっているができない」――。こういう状態の日本企業が今、とても増えている。「SOAはやったほうがいいのだが…」「もっと、CRM(顧客情報管理システム)など顧客周りのITに積極的に投資すべきだが…」など、「○○すべき」と考えているIT部門の経営層は多い。
向こう5年以上の趨勢は、さまざまな情報源から得た情報を解釈すれば、ある程度の方向性は見えているものの、決めきることができない状況に陥っている。今までの貢献度に疑問を持たれてしまっていること、これからの貢献度にも疑問を持たれてしまっていること、このことが「○○すべきなんだけど…」という歯切れの悪い議論をもたらしていると考えている。
筆者は、この問題の本質は一緒であると思っている。要は、ITに対する正しい理解に基づいて従来の取り組みを行ってきていないし、これからの取り組みをしようとしていないということだ。
家電であれば「おいしいご飯が食べられる」というちょっとした理由と、懐具合の換算で大体の意思決定はできる。だが、何千万、何億、時には何百億円にもなるITの投資では、なかなかそういったカジュアルな意思決定ができない。
先日、大手ベンダー出身のある金融機関のCIO(最高情報責任者)と話をすることがあったが、「IT業界はユーザーをだまして投資を誘導してきた」と仰っていた。多かれ少なかれ、そういうことが行われてきていたことは否定できない。筆者にも、本当に効果が出るのか懐疑的ながらも、所属している会社の意図から、大きな金額の提案を正当化するためのロジックを必死になって編み出していた。
ユーザー企業側も自分たちの投資を正当化するために、“エンピツなめなめ”してきたのではないか。これが単に効果を大きめに言うだけなら、そう影響ないのだが、本来的に実現が厳しいことに投資を積んで実現させてきたこともあるのではないか。アドオンが大きくなったERPや、基幹的に利用されているグループウェアなどはその最たる例である。
要は、提案する側も提案される側も、正しい認識に立っていなかったということではないか。