ERPを使って業務改革、グループウェアを入れて業務改革、ということはよく言われてきているが、本当に業務改革という言葉がもたらすほどの効果があったのか、は評価に困る。
実際に業務改革プロジェクトには多く携わってきているのだが、効果を生むかどうかは、ITを導入したか否かで決まることは少なく、導入した情報システムが出すデータやファイルを使って何かを感じ、対策を取る管理職や担当者がいるかいないかに大きく依存していることが多い。
伝統的でシンプルな例を言えば、受発注システムを入れたときに、入れた伝票データによって、在庫や売り上げがリアルタイムにわかることに気付いた生産管理のマネジャーが「だったら、これ今作らなくて、1週間遅らせた方が、在庫が増えなくていい」とかを生産部門に指示することで在庫が減るなど、こういったこと以上では効果は生じていない。
正確な検証はしていないのだが、オンラインシステムを導入していた頃までは、それでも実際に伝票の電子化が進んで、上述のような省力化が目に見えて進んでいたのであろうが、ERPにもなると電子化以上の効果はそもそも期待できないこともあり、多大な効果などを謳ってしまったケースが結構あると思っている。
ITとはどこまで行っても、情報をインプットして、貯めて、計算して、アウトプットを行うものである。この本質は変わらない。この本質を超えて期待をすることは、そもそも間違いを犯していたと考えるべきだろう。
こういった誤りを正していくために、ITが役立つ局面と利用の目的をベースとして、大きく3つの目的に分けて考えることが重要であり、有効だと思う。
1.企業のインフラストラクチャとして
今時、電気のない生活が想像できず、もう後戻りできないように、経理や給与計算を手作業でやる業務は想像できないだろう。請求書が手書きでやってきたら「あの会社大丈夫か?」と思うだろう。メールアドレスが一人ひとりにないような企業があれば「この会社おかしくないか?」と思われるだろう。このような、ないと企業として恥ずかしい領域のITはインフラストラクチャである。言葉を変えれば、ライフラインである。ここで見栄を張るか、コストパフォーマンスの高いもので行くかは、各企業の余裕とスタイルで決まってくることだ。
2.人材への装備として
世の中には、優秀な営業もいれば、普通の営業もいる。優秀な製販調整をする人もいれば、そうではない人もいる。ベンダーへの影響力もあり、交渉が上手な資材担当もいれば、取引先に押され気味の資材担当もいる。優秀な経営者もいれば、そうでもない経営者もいる。
人によってパフォーマンスの差が激しい業務は数多く存在している。このような業務領域へのITはEquipmentである。Equipmentは、その業務領域の重要性に依存し、人材による差が競合や社内担当間で激しい場合には、導入を考えるべき領域である。
3.ビジネスの設備として
通販を始める、金融業を始めるなどと言った場合には、ITは欠かせない設備になる。これはビジネスをやるかやらないか、競合にどれくらい勝ちたいかによって、設備のレベルは依存する。
どういう工法で作っていくか
自分たちの持っているヒトやカネが無限であれば、無尽蔵にこの1~3に投資をしてもらって構わないのだが、そこまで余裕がある企業はないだろう。従って、メリハリを付けることが必要だ。すなわち、自分たちのやるべきことは、どこかを選択し、集中することになる。