SAPがソーシャルメディア活用ソリューションの提供に本腰を入れている。競技が真っ最中のロンドン五輪でも、西欧の一国が「SAP版Facebook」ともいえる企業向けSNS「StreamWork」を活用しているという。ナショナルチームの監督と選手が練習場所などの基本的な情報に加え、ドキュメント、動画、他国の選手の競技内容などを共有しており、選手はモバイル端末からも情報を閲覧できる。
8月1日には、StreamWorkとビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェアを連携させ、BIによる分析情報をSNS上に配信したり、BIによる情報への各種のコメントをSNS上に掲載するといった新機能を、BIの新製品「BusinessObjects Business Intelligence 4.0 Feature Pack 3」に組み込むと発表した。
モバイルやソーシャルへの取り組みを強調してきた同社だが、実際のユーザー動向はなかなか見えてこなかった。ここにきて、海外の事例が伝わってきた。
TwitterやFacebookの大量の書き込みを分析し、ビジネスに生かすいわゆるビッグデータ分析をするサービスが「SAP Social Media Analytics by NetBase」だ。日本でも7月10日に提供を開始すると発表した。NetBaseが開発したクラウド型のソーシャルメディア分析サービスをSAPが販売する形を取る。1日9500万に上るともいわれるソーシャルデータを分析し、新製品やキャンペーンなどの消費者への反応をリアルタイムかつ正確に理解できるという。
米メディア業のThe Wall Street Journalは、記事づくりの1つとしてSocial Media Analytics by NetBaseを活用している。トライアスロン選手のランス・アームストロング氏がドーピングの疑いをかけられたことについて、6月13日から15日のTwitterおよびFacebookでの反応を分析し、公開した。
これによると、53%がアームストロングに対してネガティブな反応。「全タイトルを失うことを望む」「恥ずかしい」といった書き込みがあった。一方、31%は肯定的なもので、「少し休ませてあげよう」「彼へのこうした疑惑は信じがたい」といったものだった。そのほか13%は「誰も気にしない」「みんなやってること」といったどちらともいえない反応だった。
おびただしい数のソーシャルメディアの反応も、分析処理してまとめることで、消費者全体の反応をかなり正確につかむことができる。それを伝えることは、メディアの本業にもマッチするといえそうだ。
また、食品メーカーのKraft Foodsは、自社がつくったコマーシャルに対して、コールセンター経由でたくさんのクレームが入ったという。「コールセンターにかけるのはある程度年を取っている人、ソーシャルメディアの利用者は比較的若い人」という前提で、ソーシャルメディアの反応を調べたところ、「先進的なCM」との意見が多かったという。ちなみに、このCMは、大人に怒られている子供が反省することなく、ニヤっと笑うといった内容で、シリーズ化されていた。クレームの多くは子供の母親世代のものだった。結果として、ソーシャルでの反応が決して悪くなかったことを評価し、コマーシャルの継続を決めた。重要な経営判断をする際にも、ソーシャルメディアの分析が役に立ったことになる。
ソニーのゲーム機「PlayStation Vita」に関して、2011年から1年間のソーシャルメディアでの評判をSocial Media Analytics by NetBaseで分析した。
「良い」「大人気」といった数の多いコメントが大きく、少ないコメントは小さく表示される。コメントをつけた人がよく読むメディアなどの属性情報も詳細に取れる。
「Social Media Analytics by NetBase」で「PlayStation Vita」を検索。1年間のソーシャルメディアでの反応を数十秒単位の短い時間で取得できていた
こうした分析の基盤になるのがインメモリデータベースなどのインフラだ。FacebookやTwitterのユーザー数が日本でも増加し、誰もがさまざまなコメントをつけることに時間を使っている最近の状況からすると、インフラ需要を含め、ソーシャル=IT企業のビッグチャンスという構図には、思っていた以上にリアリティがあるといえそうだ。