スマートデバイスが導く企業戦略

iPad導入数で世界2位--モバイルにシフトするSAP

怒賀新也 (編集部) 2012年07月26日 16時05分

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 ERPアプリケーションを提供するイメージが根強いSAPだが、ここ2、3年で企業向けモバイルソリューションの提供へと軸足を移している。インメモリ技術を用いてデータを高速処理するソフトウェア「HANA」を基盤に、モバイル、クラウド、データベース、アナリティクス、アプリケーションが5つの柱だ。

 7月25日には、モバイル統合管理基盤「Afaria」のサービスパック(SP1)の提供を開始した。4月には、電気、ガス、水道などの業界を中心にフィールドサービスや資産管理アプリを提供するSycloを買収。モバイルアプリ開発でAdobe、Appcelerator、Senchaと提携し、HTML5を含めたモバイルアプリケーションの構築を効果的にできるようにすることを明らかにしている。

 「App Storeの企業版」を目指すべく、「SAP Store」を開設。SAPおよびパートナー企業が提供するモバイルアプリを検索、購入できるなど、パートナーエコシステムを築こうとしている。「2015年に10億ユーザー」とするモバイル戦略の目標を達成する方法の1つと考えられる。SAPモバイルアプリとして、現在31のアプリを日本語で出荷中だ。

 社内での端末導入も急ピッチで実施した。2010年からBlackBerry、iPhone/iPadを導入し、私物端末を利用するいわゆるBYOD(Bring Your Own Device)の仕組みも取り入れた。

SAPジャパンのソリューション統括本部モバイルソリューション部長の井口和弘氏
SAPジャパンのソリューション統括本部モバイルソリューション部長の井口和弘氏

 SAPジャパンのソリューション統括本部モバイルソリューション部長の井口和弘氏によれば「iPadの導入数は1万7000台あまりで世界2位。iPhoneは1万3000台以上、BlackBerryは1万9000台、Samsung Galaxyは1300台以上で、半分はBYODの形式。主な利用対象者は開発、営業、経営層」という。さらにWindows Phoneの評価も開始した。利用できるアプリの数は120に上っている。

 井口氏は「考慮するべきことはセキュリティの確保」とする。ユーザーが端末を紛失した際に、いかに企業情報を守るかがテーマという。基本的な考え方は「デバイスではなくデータを管理する」ということ。特に、私物端末を持ち込むBYODでは、多少込み入った手続きが必要になる。

 BYODでユーザーが求めるのは、空き時間にプライベートな用件をこなせるようにすることや複数のデバイスを持たなくて済むことなど。一方で、企業としての要件は、企業のネットワークに接続したデバイスを管理し、セキュリティを確保すること。現状は「黙認」の形で実現しているケースも多いが、そこにリスクがあるのは確かだ。

SAPのモバイル端末導入状況。iPadが最も多い
SAPのモバイル端末導入状況。iPadが最も多い

 印刷機器などを製造するLexmarkは、SAPが買収したSybaseのUnwired Platformによるカスタム営業支援アプリを導入し、Afariaによるデバイス管理を実施している。営業担当者の75%近くの時間が営業訪問の準備や移動、営業システムの更新に割かれている現状を踏まえ、モバイル端末の導入を進めた。この端末については私物端末を取り入れるためにMDMを活用し、BYODを実施するアプローチに転換した。

 AfariaなどのMDM製品を利用することで、BYODが持つ紛失時などのリスクを軽減できるのがその理由。SAP社員が私物端末を業務に使う場合、まず「BYODプログラム」に参加する。そこでAfariaを用いたセルフアクティベーションを実施すると、端末に利用環境が実装されるという。

 パスワード文字数など設定した基準の順守、Wi-FiやVPN認証の配信、アクセスコントロール、コンプライアンスレポート、アプリケーションレベルでの制御など、さまざまな条件にユーザーは応じる必要がある。端末紛失時にリモートからデータを消去する「リモートワイプ」にも最初の認証時に同意しておく必要がある。

 リモートで消去されるデータは、端末に導入したソフトウェアが仕切った企業利用向けの領域だけで、個人として利用している領域にはワイプは及ばない。ただし、SIMカードを取り出してリモートワイプのコマンドを不能にするといったことも、技術を持つ犯罪者ならできるとの指摘もあり、利用者が一定のリスクを負担することは間違いない。SAPジャパンでITインフラを担当する佐藤歩ITシニアマネージャーによれば、現状はそうしたリスクに対する金銭的な手当てなどはないという。

 スマートフォンの普及とともに、それを業務で利用する流れが不可逆的になる中、現在多いと思われる「黙認」の形態を続けるにはリスクがある。ある企業が端末紛失などによる大きな事故を起こして社会問題化する可能性もありそうだ。その背景で、私物端末をセキュリティを確保した上で業務で利用していく仕組みとして、同社のモバイルへの取り組みや製品展開は参考になる。

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