SAPPHIRE NOW 2012:エンタープライズはコンシューマー中心の新しい時代へ

末岡洋子

2012-05-15 14:57

 独SAPの年次カンファレンス「SAPPHIRE NOW 2012」が米国時間5月14日、米フロリダ州オーランドで幕を開けた。

 モバイル、クラウド、インメモリに明確にフォーカスする同社の共同最高経営責任者(CEO)のBill McDermott氏は、基調講演の中でソーシャルとモバイルの時代にコンシューマー中心のシステムが必要と呼びかけた。「これまでにはない方法でビジネスを動かすのを支援する」――McDermott氏は、顧客の成功に対するSAPの強いコミットを示した。

写真1 SAP共同CEOのBill McDermott氏

 McDermott氏のスピーチは、コンシューマーにフォーカスしたものとなった。どうやってビジネスモデルを再度イノベーションするか、成長するか――これを理解するには、まずはわれわれが置かれている状況を把握する必要がある。そこで出てくるキーワードがコンシューマーとなる。

 McDermott氏によると、現在コンシューマーが主導する“革命(レボリューション)”が起こっており、これがビジネス環境をいちから変えつつあるという。「“いますぐ”“いつでもどこでも”“強いソーシャルな結びつき”などの特徴を持つコンシューマーの需要が牽引するパラダイムシフトだ」と語るMcDermott氏は「コンシューマーは(1)スピード、(2)シンプルさ、(3)パーソナライズという3つを求めており、これがすべてを変えることになる」とも述べる。このトレンドは、途上国や成長国を含む世界中が舞台となって進んでいるという。

 1つの大きな要因が、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末だ。魅力的な端末が登場したことで高機能なモバイル端末が急ピッチで普及しており、企業にもその波が押し寄せている。コンシューマライゼーションといわれるトレンドを示唆しながら、「企業の4分の3がBYOD(Bring Your Own Device)ポリシーを敷いている」とMcDermott氏は説明する。

 インターネット上には30億件のソーシャルメデイアプロフィールが作成されており、じきに電子メールアカウント数を超えると予想されている。端末から生成されるデータはどんどん増えている。2003年までに人類は5エクサバイトの情報を生成したが、現在われわれは同じ量をわずか12時間で作り出しているという。

 イノベーションのサイクルが短縮されており、「モバイル、ソーシャルというコンシューマーのトレンドがエンタープライズにやってきた。これによりCxOの幹部はビジネスモデルやコンシューマーエクスペリエンスの再考案が必要だと感じている」とMcDermott氏は述べる。これは業界、地域を問わず共通の課題になっているという。

 それを支援する必要がある――McDermott氏は、2年半前にJim Hagemann Snabe氏とともに共同CEOに就任した際に成長戦略を見直した。その結果、モバイル、データベース、クラウドの分野に拡大することで、顧客企業がコンシューマー主導に変革するのをエンドツーエンドで支援していく決断をしたと明かした。SAPが提案する新しいエンタープライズは、意味のある形で顧客とのエンゲージを強め、技術を使ってスピードを獲得する。

 「顧客エクスペリエンスをインスタントに、ローカルに、パーソナルに、新しいレベルに持ち上げることができる。これらはすべて、これまでには不可能だったことだ」(McDermott氏)

 だが、それだけではない。「変化が大きい分、チャンスも大きい」とMcDermott氏は述べ、企業に限定されず、経済や社会をエンパワーすることができるとビジョンを語った。「SAPは提携、そしてコラボレーションのプラットフォームだと信じている。ともに新しいコンシューマーレボリューションを牽引してイノベーションを起こそう。経済成長の触媒となろう」とよびかけた。

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