独SAPがインメモリデータベース技術を正式発表して1年。中国・北京で11月15日から2日間に渡り開催された「SAPPHIRE Now/TechEd in Beijing 2011」では、6月に一般提供を開始したインメモリデータベースアプライアンス「HANA」の導入事例が次々と紹介され、新戦略が軌道に乗っていることを印象付けた。
SAP共同設立者Hasso Plattner氏は、実はカラムナストアの可能性を信じていたという。Plattner氏は2年前、SAPの最高技術責任者(CTO)Vishal Sikka氏に「課題」を与えた——「SAPの新しい方向はインメモリ、オンデマンド、モバイル」と指南し、Sikka氏が中心となって技術開発を進め、製品戦略に落としていったのだ。
北京のSAPPHIRE Nowの会場で、あまりインタビューに応じることがないというPlattner氏、そしてSikka氏の2人がグループ取材に応じた。
--エンタープライズコンピューティングの将来をどうみているか
Plattner:小規模の特化型SaaSが巨大なSAPシステムをリプレースするといわれてきたが、これは起こっていない。いま起こっているのは、顧客がHANAを導入して自社ビジネスを高速化させているということだ。SAPは3つのメガトレンド(モバイル、クラウド、インメモリ)を製品にして、顧客がその上にSAPや非SAPシステムを組み合わせてイノベーションを進めている。我々は、すでにあるデータをさまざまな視点から見たいというニーズを支えている。
HaierのCEOが基調講演で、前線の従業員がより自律的に動けるようにしたいと言ったが、データを自律的に得る——それも数秒で得る仕組みが必要となる。HANAはこれを可能にする。SAPが顧客にできる最大の貢献といっていい。われわれはエンタープライズの可能性を解き放つ。
Sikka:日本のヨドバシカメラも同じだ。現時点で唯一(処理性能)10万倍を達成した事例で、500万人のポイントカードのインセンティブ計算に使っている。これまでは丸3日かかるので月に一度しか計算していなかったが、HANAは2秒で完了させる。これが何を意味するかというと、顧客がポイントカードを提示するその場で計算ができるということになる。
--HANAは「支障をきたさないイノベーション」を謳っているが、顧客はHANAの導入に障壁を感じていないか
Sikka:導入と実装、ともに障壁を感じていない。高速化により自社のビジネスを変えたいというマインドセットがあれば、HANAはそれを可能にしてくれる。理論を説明すると、顧客は納得してくれる。
たとえばNongfu Spring(中国のミネラルウォーター企業)はHANAで非SAPアプリケーションを動かしている。T-Mobileや三井情報もSAP以外のデータソースにHANAを導入している。 顧客の中には2週間で実装したところもある。これは良い傾向で、成長に勢いがついている。
実際、HANAはSAP製品の中で最も順調にパイプラインが成長している製品で、収益性も最高レベルだ。中でも日本は、野村総合研究所が世界初の顧客であり、導入機運がもっとも高い市場だ。
顧客がHANAのメリット、導入や活用などの事例を共有できるように、コミュニティサイト「SAP HANA Experience」も立ち上げた。顧客が自分でできるというメリットは大きい。