3つ目は「グローバル人材の育成」。安斎氏によると、「これからはSAPジャパンだけでなく、SAPグローバルを舞台に活躍できる日本人をどんどん育て上げていきたい」。先の2つと違って、これについてはこれから本格的に取り組みたいという同氏の、いわば決意表明である。
こうしてみると、経営資源であるヒト・モノ・カネでそれぞれ存在感を示すのが安斎流といったところか。他の外資系日本法人にも当てはまる考え方ではなかろうか。
「ビッグデータ分析・活用のエキスパートである“キュレーター”という言葉をぜひ流行らせたい」
(富士通 高梨益樹 シニアマネージャー)
富士通が8月24日、「ビッグデータ分析・活用を支えるデータキュレーションサービスについて」と題した記者説明会を開いた。同社インテリジェントサービス本部インテリジェントコンピューティング室シニアマネージャーである高梨氏の発言は、その説明会で開口一番、自らも務める“キュレーター”と呼ぶビッグデータ分析・活用のエキスパートへの思いを語ったものである。
富士通 高梨益樹 シニアマネージャー
高梨氏によると、キュレーターとはモデリングやアナリティクス、システムデザインといった専門スキルを持ち、データキュレーションサービスによって顧客企業の持つ業務データや未活用のデータを分析・評価し、データ活用の提案を行うエキスパートだという。
ちなみにデータキュレーションサービスとは、顧客企業がビッグデータを活用し、新ビジネスの創出や業務改善に結びつけることを支援するコンサルティングサービスのことである。
高梨氏はキュレーターの仕事について、「要はデータに語らせること。そのために最重視しているのはモデリングのスキルだ。例えば、機械の故障を予測する場合、キュレーターはどのデータから機械の状態がわかるのかといったアプローチをとる。これは従来の分析手法ではなかったアプローチだ」と語る。
富士通ではこのキュレーターについて、2011年1月にビジネスインテリジェンス(BI)などを担当してきた研究者やコンサルタント、プロダクト開発者、SEなどを集めて専門組織を設立しており、育成に努めている。高梨氏によると、キュレーターがスキルを生かすためには、顧客企業のビジネスの現場で企画の段階から入り込むことが望ましいという。
キュレーターという言葉はかねて「情報の目利き役」として注目されてきた。『キュレーションの時代』(ちくま新書)の著者であるジャーナリストの佐々木俊尚氏は、キュレーションとは「無数の情報の海の中から自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新たな意味を与え、そして多くの人と共有すること」だと定義している。そして、そのキュレーションを行う人をキュレーターと呼んでいる。
高梨氏が語るキュレーターは、こうした情報の目利き役をビッグデータ分析・活用のエキスパートとして明確に位置付けたものといえる。考えてみれば、筆者の仕事でもある編集もキュレーターの要素が求められる。どうやらキュレーターというのは広い分野に関わることから、コンサルタントやデザイナーといった言葉と同じような使われ方をされそうだ。新たな発想を意識し促す言葉として、高梨氏が言うようにぜひ流行らせたいものだ。
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