IDC Japanは9月11日、クライアント仮想化の先進的ユーザー企業の導入事例を分析、結果を発表した。導入に成功した企業は「導入に際して障壁が特になかった」としており、導入プロセスは以前より滞りなく進む傾向にあるという。
導入効果について定量的、定性的の両面で試算していることも共通要因として挙げている。国内の経済環境など外的要因の影響で、プライベートDaaS(Desktop as a Service)やITベンダーのデータセンターの利用で“ITを利用する”サービス型需要も増加傾向にあると説明している。
産業分野別に見ると、導入率の高い金融、情報サービス、自治体、大学、医療での先進的事例が多く見られるようになっている。中でもセキュリティを重視する銀行や生命保険、損害保険など金融での導入が進んでおり、同業種だけでなく他業種に対しても影響力の高い規範的事例と説明する。
シンクライアントとプレゼンテーション仮想化は、主に一般企業のオフィスで使用され、企業の汎用業務や事務で活用される、いわゆる定型業務向けが主流だった。一方仮想デスクトップ基盤(VDI)やDaaS、モバイル仮想化など仮想化技術の進化と、それに付随するネットワークの進化、スマートデバイスの出現から、従来のオフィスでの業務に加え、銀行の勘定系システム、小売りの流通在庫系システムなどの基幹業務、病院や工場など現場での活用など、適用領域も拡大しているという。
先進的なユーザー企業は、生産性を向上させるために積極的にITを取り込んでいる。仮想化技術は多くの製品やサービス、ソリューションなどに取り込まれており、特にモバイル端末を業務に取り込むための技術として期待されている。
こうした背景からモバイル仮想化も2012年から拡大基調に入ると予測する。IDC Japanの渋谷寛氏(PC、携帯端末&クライアントソリューションシニアマーケットアナリスト)が以下のようにコメントしている。
「クライアント仮想化技術は、クライアント端末をサーバやデータセンターなどのインフラに移行するパラダイムシフト。多くの先進的な導入事例が示すように、もはや一部のユーザーにのみ適用可能な技術ではなく、汎用的技術になりつつある」

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