2012年もあとわずか。5月にスタートした本連載『今週の明言』も、33回を数えこれが今年最後の回となった。そこで今回は特別編として、これまで紹介してきたキーパーソンの明言から、2012年に注目されたICTトレンドのキーワードを5つ取り上げてポイントを整理しておこう。
1.ソーシャル
1つ目は「ソーシャル」。2012年は、ソーシャルメディアあるいはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)といわれる新たなコミュニケーションスタイルが、一気に浸透した感がある。ソーシャルについてはこんな発言があった。
「今後5年以内にあらゆるアプリケーションソフトがFacebookと連動する」 (米Facebook マーク・ザッカーバーグCEO、5月23日掲載)
まさにSNSの潜在パワーを象徴する発言である。ビジネスアプリケーションも対象にしているとみられることから、企業が今後SNSをどう活用していくのか、という観点でも論議が活発になっている。一方で、セキュリティとの兼ね合いで次のような発言もあった。
「ソーシャルメディアが標的型攻撃の的になるケースが増えているので注意」 (米Symantec Paul Wood サイバーセキュリティインテリジェンスマネージャー、7月20日掲載)
Wood氏はその根拠として、「ソーシャルメディアは友人や知り合いとのコンテンツ共有を目的にしているので感染しやすい。さらに流行のトピックによって、ターゲットも絞りやすい。犯罪者にとってこれほど悪用しやすい場所はない」と語っている。
2. ビッグデータ
2つ目は「ビッグデータ」。この言葉も2012年に一躍脚光を浴びた。当初は、ビッグデータとは何か、という論議が盛んに行われた。この点についてこんな発言 があった。
「日本ではソーシャルメディアの分析をビッグデータ活用ととらえる風潮があるが、それは間違いだ」 (日本オラクル 三澤智光 専務執行役員、9月28日掲載)三澤氏によると、「企業がビジネスを展開していく上では、ヒト、モノ、カネに関するデータを正確に把握して活用する必要があるが、そのためには構造化データと非構造化データをどうマッシュアップさせていくかが非常に重要なポイントになる」という。
さらに非構造化データについて、「非構造化データというと、ソーシャルメディアのような外部にあるデータが注目されがちだが、例えばコールセンターに寄せられた消費者からの音声データや、Webを通じて寄せられたデキストや画像などのデータも非構造化データだ。ソーシャルメディアなども含めて、こうしたさまざまな非構造化データを分析することで、新たなビジネスチャンスをつかめる可能性が一層広がるだろう」と説明している。
3. BYOD
3つ目は「BYOD(Bring Your Own Device)」。個人所有の端末を業務利用することである。とりわけスマートフォンが急速に普及していることから、2012年はBYOD化に取り組む企業が相次いだ。ただ一方で、ガバナンスやセキュリティの観点から慎重な見方をする企業も少なくない。BYODについてはこんな発言があった。
「スマート端末のモバイル業務利用が今後一層加速し、コンシューマ領域とビジネス領域の融合によるビジネスチャンスが生まれるだろう」 (富士通研究所 司波 章 主管研究員、9月14日掲載)
司波氏は、「仮に会社が従業員に端末を配布するにしても、従業員がプライベートでも端末を自由に操作できるモードがないと、結局は2台を保持する形になってしまう。そうした状況にならないように、BYODにはまじめに取り組んでいかないといけない」と強調している。