小規模企業への攻撃が増加--懸念されるAndroidの“身代金”要求

大河原克行

2013-04-23 13:19

 シマンテックは4月23日、ネット上にひそむ脅威を分析したレポートの最新版を発行した。最新版となる「シマンテックインターネットセキュリティ脅威レポート第18号」は、2012年1~12月に全世界のネットセキュリティ脅威に関するデータを分析、標的型攻撃やスマートフォンをはじめとするモバイル機器を狙った攻撃の増加、なりすまし(遠隔操作)ウイルスを悪用した事件などの実態が示されている。

 同レポートによると、2012年に発生した標的型攻撃は、前年比42%も増加。特に従業員250人未満の小規模企業への攻撃が全体の31%を占め、前年の18%の構成比から大きく増加。小規模企業への攻撃数では、前年から3倍も増加しているという。


浜田譲治氏

 シマンテック セキュリティレスポンス シニアマネージャーの浜田譲治氏は「小規模企業はセキュリティに対して投資しにくい環境にあり、これが狙いやすい状況を作ることにつながっている」と背景を説明。「小規模企業に“水飲み場攻撃”を行うことで、より大きな規模の企業に感染を拡大させるといった動きもある」という。

 水飲み場攻撃は、標的(=大企業など)が頻繁に訪れるブログや小規模企業のサイトを改竄。その後、標的が改竄されたサイトを訪問すると、閲覧したコンピュータに密かに悪質なコードをインストールする。いわば、標的を待ち伏せする手法だ。

 「メールは怪しまれるのに対して、正規なサイトを改竄することで、誰もが安心して見てしまう。短時間で多数の犠牲者が出る仕組みであり、特定のグループを狙って情報を窃盗するものだが、これが無差別化する傾向もある。2013年は水飲み場攻撃が広まるだろう」(浜田氏)

 2012年には、人権問題を支援するNPOにおいて、1回の水飲み場攻撃によって、24時間以内に政府機関を含む500の団体と企業が感染した例もあったという。日本では、水飲み場攻撃の被害は現時点では報告されていないという。

 知的財産の窃盗を目的に、製造業を狙った攻撃の広がりも特筆できるという。製造業への攻撃が増加したのは、製造業の請負業者や下請業者が貴重な知的財産を所有していながらも、攻撃に対しては脆弱な環境であるという点を突いたものだとしている。

 「職務権限別に見ると、研究開発部門が多く、知的財産を持って人を直接ターゲットとする例が増加している。営業部門もさまざまな資料を持っていることから狙われている」

  • 企業規模別に見た標的型攻撃

  • 産業別に見た標的型攻撃

  • 職務権限別に見た標的型攻撃

“身代金”を要求するマルウェアに注意

 個人ユーザーでは、ランサムウェアとAndroidなどのモバイル環境での脅威に対して、脆弱な状態が続いているという。モバイルマルウェアは、前年比で58%増加し、モバイル脅威全体の32%がメールアドレスや電話番号の情報を盗もうと試みたという。

 最も多くの脆弱性が発見されたのはiOSで387件だったが、脅威の数は1件にとどまったという。これに対して、Androidの脆弱性は13件だったものの、脅威数は103とAndroidが最も多かったという。

 iOSは、App Storeでの審査が厳しいことがプラスに働く一方、Androidは市場シェアが大きいことやプラットフォームがオープンであること、さまざまな方法で悪質なアプリケーションを配布できるなどの要素が影響していると分析している。

 Androidを狙ったマルウェアが急増しているという。2012年1月には77種類だったのが、2012年12月には174種類に増加。亜種が2012年1月には592種類だったものが、2012年12月には4404種類へと大幅に増加している。

 日本からも「Android.Sumzand」と呼ばれる情報を盗み出すマルウェアが発見されている。「現在は、Google Play上で日本のワンクリック詐欺アプリが増加している」という。

 ランサムウェアは「今後使用される可能性がある」とし、「ユーザーのマシンをロックさせ、アクセス権との引き換えに金銭を要求する悪質な攻撃方法が広がる。2012年には16組織がこれに関与し、500万ドルの被害額があったと想定される。あるランサムウェアの脅威が18日間に行った攻撃回数は50万回に達した。日本でこうしたものが誕生してもおかしくない」と警告を鳴らした。

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