Vodafoneグループは、さまざまな機器をネットワークに接続させ、新たなサービスを創出できる“M2M(Machine to Machine)”について、5月16日に最新状況と事業戦略を説明した。産業用機器を輸出する有力企業が多い日本で、この分野での優位を確保し、地歩を固めることを図る。
M2Mは、個別に稼働している機器同士をネットワークでつなぎ、これらが相互でやりとりできるようにして、各々の機器で生成されたデータをリアルタイムで統合、制御し、活用することができる技術だ。Vodafone Global EnterpriseのM2M APACリージョナル ビジネスディレクターのNiklas Ekarv(ニクラス・エカーブ)氏(日本法人代表を兼務)は「M2Mは、企業と顧客の関係を強化することを支援でき、サービスの質を向上させ、売り上げ増につなげることが可能になる」とその可能性を解説した。
同社のM2Mサービスでは、SIMカードが一つの基盤となる。各種機器にを搭載されたSIMカードがネットワークを通じて、M2Mサービスプラットフォームにデータを伝送する。同社のM2Mソリューションマネージャーの和田篤士氏は、同社の強みがグローバルでサービスを展開できることにあると強調。以下のように話した。
「1つのSIMを世界各地で利用することが可能だ。M2Mプラットフォームは、ほぼ全世界でローカルの通信事業者と接続し、データを一元化し、企業のアプリケーションサーバと交信できる。固定通信の部分は、世界中どこで使用しても1カ所の接続で集約される。伝送方式はインターネットVPNとIP-VPNを用意している。北米、欧州、アジア太平洋など各地に技術サポート拠点があり、24時間365日、専任要員が顧客サポートを提供する」
同社は「われわれのM2Mサービスはハードウェア技術、ネットワーク、アプリケーションなどを統合し、包括的なソリューションとして提供、遠隔監視、機械などの資産管理、エネルギー管理といった幅広い用途に適用できる」(M2M事業開発マネージャーの井田亮太氏)としている。
Niklas Ekarv氏
同社が日本市場で照準を合わせているのは「自動車、家電、産業用機器」(Ekarv氏)だが、最近では自動車の運転状況に応じた課金保険サービスを開発している。コンサルティング企業のTowers Watsonと提携した、このサービスでは、運転者の運転状況を示すデータを取得し、保険会社に転送する。「常に安全な運転であれば、保険料を安くしたり、実際の使い方で、保険料が決定される公平なシステム」(同)が実現できるという。
一方、資産管理では「スマートコンテナ」の例が挙げられた。これは、コンテナを遠隔監視、制御することで、コンテナ内の温度や湿度を管理する仕組みであり、同社は「一定の温度を保つことなどにより、生鮮食品の安全性を確立できる」(同)としている。
Ekarv氏は「M2Mは、資源を効率的に利用することが可能だ。現場では、ムダな作業時間を低減化することもできる。M2Mは、商品やサービスの提供の仕方を根本的に変える強力な技術の一つだ。われわれはM2Mにより、ビジネスの変革を支援していきたい」と意気込みを見せた。
国内では当面、自動車、家電、産業用機器の領域に重点を置くが「最も活発なのは産業用機器」(Ekarv氏)とみている。国内には産業機器を輸出する企業が多いことから、グローバルサービスを標榜する同社は、この分野に期待をかけている。