米を真空パックして世界へ--東北復興に向けたIBMの会議で議論

怒賀新也 (編集部)

2013-05-27 07:30

 日本IBMは5月14日、テクノロジを活用した経営変革で企業の競争優位性獲得を支援することをテーマとしたイベント「IBM Leaders Forum 2013 Spring 東北」を仙台のウェスティンホテルで開催した。

 「スマートシティ」戦略を進めるIBMの東北のプロジェクトの進捗状況のほか、東北の復興について東日本放送やアイリスオーヤマ、経済産業省 東北経済産業局のトップが集まり、イノベーションの在り方を含めた議論を深めた。

 パネルディスカッションに参加したのは東日本放送会長の伊藤祐造氏、アイリスオーヤマ社長の大山健太郎氏、東北経済産業局局長の山田尚義氏の3人。モデレーターを日本IBMの東北支社長、樋口正也氏が務めた。

 震災後の節電という「国家命題」を受け、もともと強みを持っていたLED電球の分野で高いシェアを持つというアイリスオーヤマ。大山社長は「日本の全世帯の3分の1が一人暮らし、いわゆる単身世帯。そこに目をつけている」と話す。業績は2010年度の売り上げが850億円規模、そこから2012年度には1100億円、2013年度は1350億円規模と順調な成長を見込む。現在の東北で元気な企業の代表格といった位置づけだ。仙台経済同友会の代表幹事でもある大山社長が、東北復興のための具体的な提案をした。

 「宮城県はおいしいお米を生産する農業立県だ。現在は米を普通のビニール袋に入れて流通させている。これではすぐに味が落ちてしまうためもったいない」と大山氏。

 「ITを活用して米のトレーサビリティを徹底し、玄米の状態で運び、精米したら脱酸素剤を入れてすぐに真空パックする。いつ封を切ってもおいしい新米が楽しめる。それを輸出するのだ」(大山氏)

 例えば、寿司の味は「シャリ6割、ネタ4割」だという。世界は空前の寿司ブームといわれる中で、米が東北の強力な武器になるとの主張だ。

 大山氏に促される形で意見を述べたのが、東日本放送の伊藤氏。「日本の経済政策は目先ばかりだ」と批判。70億人の世界人口のうち4割がBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)におり、平均所得1万ドルを超えてくる日も近いとする。

 「そうなれば米の生産が間に合わなくなるはずだ。つまり、今後日本は(農業などの)第一次産業にもっと注力するべきなのだ。米に限らず、食用の葉には年に26回収穫できるものもある。いわば“26毛作”だ」(伊藤氏)

 だが、伊藤氏は併せて「農地に建築物をつくれない」ことを定めた農地法などが邪魔をすると言う。そこで「復興特区を最大限に活用するべきだ」との持論を展開した。

 農業の世界展開で議論が熱くなる感覚は、東京に住むものからすると実感しにくいものの、可能性を秘めていることは理解できる。日本の米は「Sticky Rice(ねばっこい米)」と呼ばれており、寿司のシャリとはいえ、必ずしも欧米やアジアにいる消費者の口に合うとは限らないが、興味深いアイデアであることは間違いない。

IBMが着々と進めるスマートシティ戦略

 日本IBMの経営者向けのイベントで、こうした議論が交わされることには理由がある。

北九州市の事例 北九州市の事例
※クリックすると拡大画像が見られます

 日本IBMは既に、東北を含めた日本各地で農業の高度化などの取り組みを進めている。

 登壇した福島県伊達市長の仁志田昇司氏は「IBMに感謝している」と切り出した。伊達市の農業改革のためにIBMから米国人3人、日本人3人が来て、3週間にわたり調査し、さまざまな改革案を提案したという。農協での桃の箱詰めや、果実一つひとつにタグをつけて管理するアイデアなどがあったとのこと。

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