IDC Japanは5月30日、国内中堅中小企業IT市場の2013~2017年の予測を発表した。2013年は円安と株高で国内経済が改善の傾向を示しているが、依然として多くの中堅中小企業で業績の回復が遅れており、2012年のハードウェア更新需要の反動などの影響から、2013年の同市場は前年比0.0%とほぼ横ばいの3兆6694億円と予測している。
2013年の国内経済は、いわゆる「アベノミクス」で急速な円安と株高から回復の兆しを見せている。東北地方の復興も加速しており、業績が改善する企業が徐々に増加していると分析。だが、新興国との競争激化、大手製造業の生産拠点の海外移転も加速していることから、依然として多くの企業で業績回復が遅れている。
2012年にPCなどハードウェア更新需要が拡大したが、2013年はその反動もあり、多くの中堅中小企業でIT支出は抑制傾向となっている。こうしたことから、2013年の国内中堅中小企業IT市場はほぼ横ばいとなり、本格的な回復は2015年以降を予測している。製品別では、中堅企業を中心にソフトウェアとITサービスで2013年以降プラス成長を予測している。
産業分野別では、2013年は情報サービス業でプラス成長、流通業でほぼ横ばいとしているが、そのほかの産業ではマイナス成長を予測している。2014年は各産業分野でマイナス成長となり、本格的な回復は2015年以降とみている。流通業では消費税対応、サービスに含まれる医療、介護では地域医療連携対応などを目的にIT支出の拡大が見込んでいる。
地域別では、2013年は多くの地域でマイナス成長を予測している。北海道・東北、関東、北陸・甲信越などで、これまで遅れていた中堅中小企業もようやくIT支出の拡大が見込まれる。そのほかの地方では、地域経済の回復の遅れ、大手製造業の生産拠点の撤退や縮小の影響から、IT支出の抑制傾向が継続するとみている。
2013年になってから政府の積極的な経済政策から国内経済は回復傾向になっているが、国内中堅中小企業IT市場は2014年まで低い成長率にとどまるとみている。一部の産業分野では経済政策の影響からIT支出の拡大が見込まれる。
IDC Japanの市村仁氏(ITスペンディングシニアマーケットアナリスト)は「ITベンダーは、経済政策の動向と、その影響範囲を的確に把握するとともに、IT支出の拡大が見込まれる産業分野に対して、重点的にソリューションを提供することが重要である」と分析している。
2012~2017年の国内中堅中小企業IT市場、前年比成長率予測(出典:IDC Japan)