チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズは8月21日、本富顕弘(ほんぷ・あきひろ)氏の新社長就任に伴い、日本市場での事業戦略説明会を開催した。本富氏は、ファイアウォールを中軸にした総合セキュリティベンダーとして認知度向上を図るとともに、国内で新たに中堅中小企業(SMB)を中心としたマネージドセキュリティサービス(MSS)に参入することを明かした。
本富氏は、社長就任にあたりパートナーやユーザーなどと話し合いを進める中で、チェック・ポイントの強みを次の5つに整理できたという。
- 20年にわたるセキュリティの老舗である
- セキュテリィ技術で複数の分野でナンバーワンである
- セキュリティの可視化、管理製品を持っている
- 世界で10万社超、日本で数千社のユーザー企業がいる
- 日本で150社超のパートナーがいる
8月1日付で代表取締役社長に就任した本富顕弘氏。1963年生まれで、北海道大学工学部卒、米ピッツバーグ大学MBAを修了。これまでにTRADOSジャパン(現SDLジャパン)、日本ネッテグリティ(現CA Technologies)を経て、ウォッチガード・テクノロジー・ジャパンで代表取締役社長を務めた経験を持つ
「チェック・ポイントと言うと、これまではファイアウォールのナンバーワンベンダーという認識が多い。ファイアウォール以外にもさまざまな製品を展開しているが、そのことは十分に知られていない。今後は、こうした複数の強みをもつベンダーであることを強く打ち出していく」(本富氏)
同社の製品群は“Software Bladeアーキテクチャ”と呼ばれる、ネットワークやアプリケーションといったそれぞれの機能ごとに提供する製品が相互に連携して動作することが特徴だ。たとえば、ウイルス対策や不正侵入防止システム(IPS)、情報漏洩防止(DLP)、ウェブセキュリティ、モバイルアクセス管理、ID管理などといった機能ごとにログを取得し、SmartEventと呼ばれる機能でセキュリティの状況を詳細に可視化、管理する。
製品の提供形態についても、ファイアウォールなどの専用アプライアンスのほか、Software Bladeの各モジュールをカスタマイズして組み込む総合アプライアンス製品に加えて、クラウド環境(Amazon Web Services)下で利用できる仮想アプライアンス製品がある。海外では、セキュリティシステムの監視や運用を引き受けるMSSを展開している。
日本市場での製品戦略については、こうしたグローバルレベルでの製品ラインアップを踏まえながら、次の5つに注力すると説明した。
- Software Bladeによる既存のファイアウォールから次世代ファイアウォール(NGFW)へのシフト
- 国内でもアプライアンス販売からサービス提供までを展開
- 従来のような大企業だけでなくSMBもターゲットにする
- シンプルな製品ラインアップにする
- 日本語対応、日本仕様をサポートする
中でも肝と言えるのが、SMB向けへのフォーカスだ。本富氏は、その背景について、最近の標的型攻撃で大手企業の攻撃の窓口として、その取引先であるSMBが狙われるケースが増えている事情があると説明した。
「中堅中小企業は、セキュリティの保護レベルは低いが、保有している情報のレベルが高く、犯罪者にとっては、スイートスポットになっている現状がある。大企業(への攻撃)の踏み台になるリスクを避ける対策が求められている」(本富氏)。具体的には、大企業向けの機能をSMB向けに提供できるようにした総合アプライアンス「Check Point 1100」の展開に注力するという。
日本対応については、単にUIのローカライゼージョンにとどめるのではなく、日本の事情に考慮したセキュリティ対策を実施していくことを指している。たとえば、「GREE」や「LINE」といった日本発のスマートフォンアプリやネットサービスについて、アプリケーションのデータベースとして管理し、可視化できるようにすることなどだ。