興味深いのは、IcefogにはMac版(Macfog)もあり、ターゲットによってはMac版を使うことだ。レポートによると、Mac版は中国語の掲示板に「Img2icns.rar」というファイル名でアップロードされていた。Img2icnsは画像ファイルからMacのアイコンを作成するよく知られたソフトだ。
掲示板からImg2icns.rarをダウンロードして解凍すると、Img2icns.appというファイル名の実行ファイルが作成される。動作させると、Windows版と同様にC&Cサーバと通信し始める。ファイル名がlaunchd.appの場合もある。launchdはMacで動作している正規のプログラムだ。
カスペルスキーでは、こうした国や目的ごとに、誰かに雇われたとも思える小グループが参加するゲリラ型攻撃は、今後も増えていくと予想する。実際、Icefogのケースに限らず、日本のユーザーを狙ったAPT攻撃の件数は増えている。しかし、一方で、危機意識が低かったり、対策が取られないまま放置されたりするケースは少なくないという。

カスペルスキー 代表取締役 川合林太郎氏
カスペルスキーでは、APT攻撃によりマルウェアに感染したケースを見つけた場合、そのユーザーやISPに対して感染したことをメールなどで知らせているが、「第3四半期は1238件の感染が日本で見つかった。その都度知らせているが、今朝チェックしたら、そのうち210件は感染した状態のままだった」(Molsner氏)という。
カスペルスキー代表取締役社長の川合林太郎氏も「感染の事実を知らせても初動が遅く、ひとごとと高をくくっていることが多いと感じる。攻撃者にとってサイバー攻撃はビジネスであり、日本語の壁で守られていた時代ではなくなった。Icefogのように日本をターゲットにした攻撃は実際に起こっており、被害も出ている」と、危機感を持つことを訴えた。
Icefogグループによる攻撃では、未知の脆弱性(ゼロデイ)を悪用した例は今のところ見つかっていない。Windows、Office、Java、Adobe Readerなどのパッチを適切にあてることで防ぐことが可能だ。レポートでは、それらに加え、確認できない人物から送られてくる添付ファイルやリンクは開かないことなどをアドバイスしている。レポート(英文)は、プレスリリース(英文)からダウンロードできる。