食材の偽装表示が深刻な社会問題となっている。消費者の信頼回復へ向けた真摯な取り組みが求められるが、それこそITが役に立つところも大いにあるのではないか。
業界団体などの調査によると、主要なホテルの4割、百貨店の6割以上が関わっていたとされる食材の偽装表示問題。およそ2カ月前、阪急阪神ホテルズがメニュー表示と異なる食材を使っていたことが発覚したのをきっかけに、不適切なメニュー表示が各地のホテルや飲食店、さらには大手百貨店の食品売り場でも次々と明らかになり、全国に広がっている。対象となる食材は牛肉やエビなどが目立ち、高価な品種を安価なもので代替していた格好だ。
消費者の信頼を失墜させた食材の偽装表示
食材の偽装表示は消費者の信頼を裏切るばかりでなく、違法行為となる可能性もある。景品表示法は故意か過失かにかかわらず、実際より著しく優良と消費者を誤認させる「優良誤認」を禁じており、消費者庁がその適用の可否とともに、取り締まり強化に向けて同法の改正も検討しているという。
そうした消費者の信頼を裏切る行為、さらには違法行為となる可能性を払拭するかのように、問題を公表した企業のトップは記者会見などで「偽装ではなく誤表示」などと強調した。だます意図はなく、担当者の意思疎通が不十分だったなどと弁明する姿が目立った。
しかし、そんな弁明は世間に通用しない。「どうせバレない」と、消費者をあなどる意識が横行していたのではないか。そう疑わざるをえないほど、この問題は消費者の信頼を大きく失墜させたといっていい。
ITを活用した食品トレーサビリティのススメ
今後は消費者の信頼回復へ向けた真摯な取り組みが求められるが、それこそITが役に立つところも大いにあるのではないか。その役に立つところとは、ITを活用した食品トレーサビリティを一層拡充させることである。
食品トレーサビリティとは、食品事故などの問題があったときに食品の移動ルートを書類などで特定し、遡って追跡して原因究明や商品回収などを円滑に行えるようにする仕組みだ。具体的には、食品の移動ルートを把握できるよう、生産、加工、流通などの各段階で商品の入荷と出荷に関する記録などを作成・保存しておくことである。