今週の明言

SAS社長が説く「正しいアナリティクス」

松岡功

2014-03-14 12:48

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、SAS Institute Japanの吉田仁志 代表取締役社長と、日本マイクロソフトの宗像淳 執行役の発言を紹介する。

「アナリティクスに対する正しい認識を広めていかなければいけない」
(SAS Institute Japan 吉田仁志 代表取締役社長)


SAS Institute Japan 代表取締役社長 吉田仁志氏

 SAS Institute Japanが先ごろ、2014年度(2014年1~12月)のビジネス戦略を発表した。吉田氏の冒頭の発言は、その発表会見で、日本企業のアナリティクスに対する認識が正しく浸透していないところがあることを危惧して語ったものである。

 吉田氏はまず、2013年度のデータ分析市場を振り返り、「アナリティクスが企業の競争力向上につながると受け止められるようになってきた」との認識を示した。

 そうした中で、SASの2013年度のグローバルの売上高は前年度比5.2%増の30億2000万ドルと、38年連続で増収を記録した。特に地域別では、吉田氏が統括責任者を兼務する北アジア地域(日本、中国、韓国、台湾、香港)の成長率が最も高かったという。

 その勢いをさらに加速させるべく、同社では2014年度の注力分野として、「Customer Intelligence」「Visualization」「Hadoop」「Data Management」の4つを挙げている。

 Customer Intelligenceでは、デジタルチャネルを含む全マーケティング施策から得られるビッグデータを分析して獲得できるようにすることで、全チャネルでのコミュニケーションをパーソナライズできるようにする。これにより、顧客体験価値を飛躍的に向上できるとしている。

 Visualizationでは、ビジュアルデータ探索ソフトウェア「SAS Visual Analytics」の機能を拡張し、将来予測を実施するためのモデル開発の機能までカバーする計画だ。

 Hadoopでは、分析ライフサイクルすべてにおいて統合することで、高価なリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)ベースからデータウェアハウスを解放するという。

 Data Managementでは、Hadoopの統合やIn-Database機能によるデータ品質管理など、ビッグデータを効率的に管理する仕組みを提供。また、センサやスマートメーターなどの膨大な情報を迅速に分析するために、リアルタイムでのストリーミング処理も提供していく計画だ。

 吉田氏は2013年度において、アナリティクスが企業の競争力向上につながると認知され始めたと語ったが、特に日本企業の場合、果たして全業種にわたってそういう気運が高まっているかといえば、甚だ疑問だ。そこで同氏に、海外と比べて日本の企業のアナリティクスに対する認識の度合いはどうなのか、を聞いてみた。すると同氏はこう答えた。

 「日本は海外と比べてアナリティクスに関する教育が浸透していないこともあり、企業での認識度も低いほうだと実感している。それもさることながら、より深刻なのは安易なアナリティクス製品が出回っている中で、将来予測を意思決定に役立てるアナリティクスの取り組みが誤解されてしまいかねないことだ。これは何としても避けたい」

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