日本マイクロソフトは4月12日、業界団体のWDLC(ウィンドウズ デジタルライフスタイル コンソーシアム)と連携し、学生によるITコンテスト「Imagine Cup日本大会 Digital Youth Award」を開催した。実際に開発したアプリを披露して競う「アプリ部門」と、アプリのアイデアを提案する「アイデア部門」に分かれており、それぞれの部門の予選を通過した各5チームが都内に集結、プレゼンテーションを行った。
アプリ部門では、筑波大学のチーム「Spot」が開発したアプリ「Spot」がグランプリを受賞。準グランプリは鳥羽商船高等専門学校のチーム「チームかぞくぐるみ」の開発した「かぞくぐるみ」が勝ち取った。アイデア部門は、慶應義塾大学 商学部 小林萌恵さんの企画「Challenge for SHS」がグランプリに、拓殖大学 工学部 デザイン学科 吉田圭汰さんの企画「shionpush」が準グランプリに選ばれた。
アプリ部門のグランプリおよび準グランプリとなった2チームは、Imagine Cup日本代表チームの候補としてノミネートされる。今後オンライン審査を経て、2チームのうち1チームが正式に日本代表として選出され、7月29日より米国シアトルにて開催される「Imagine Cup 2014」世界大会に出場する。日本代表チームが発表されるのは6月3日の予定だ。
アプリ部門グランプリはスポーツ分析アプリ
アプリ部門でグランプリに輝いたSpotは、筑波大学 情報学群情報メディア創成学類の木藤紘介さんと吉田拓真さんのチーム。2人が開発したアプリは、アマチュアスポーツチームに向けたスポーツ分析アプリだ。
「チームが強くなるためには練習だけでなく、試合の内容を分析する必要がある」と、高校時代に野球部で活躍していた木藤さんは話す。そのため、多くのチームでは試合内容をビデオに撮影し、動画を再生しながら重要なポイントを分析しているというが、その作業はとても非効率なのだという。
そこで2人は、撮影中に「Good」や「Bad」などのタグ付けができるSpotを開発した。この機能により、重要なシーンを探し出す作業が効率化できるという。また、点数を自動集計したり、再生中のお絵描き機能で動画に直接指示を書き込んだりできる。
現在Spotは、サッカーをはじめ6種目のスポーツに対応している。対応スポーツは今後さらに増やす予定だ。2人はSpotを1500円で販売するとしており、タブレットを持たないチームに対してはタブレットの貸し出しも含めて月額5000円で提供することも検討したいとしている。
木藤さんは、「アマチュアスポーツチームでは簡単に分析システムを導入できないが、Spotであれば容易に導入できる。分析によって選手も変化し、アマチュアスポーツ業界が前進するきっかけになると思っている」と述べた。
アプリ部門準グランプリのチームかぞくぐるみは、鳥羽商船高等専門学校 制御情報工学科の宮村騎久也さん、Choviwatana Palinさん、濱口堅太さんと、同校 生産工学システム専攻の小山紗希さんの4名。ぬいぐるみ型コミュニケーションロボットのかぞくぐるみを開発した。
「核家族化が進むと共に、共働きも増えている。孫と遊びたいおじいちゃんやおばあちゃんの思いと、子どもの面倒を見てもらいたいお父さんやお母さんの願いを叶えるために、ぬいぐるみをインターフェースとして祖父母と子どもがコミュニケーションできるシステムを考えた」と宮村さんは説明する。
かぞくぐるみでは、祖父母宅にタブレットPCと「Kinect」を設置し、子ども側にはカメラ付き小型PCが埋め込まれたぬいぐるみを置く。ぬいぐるみは、Kinectで認識した祖父母のジェスチャー通りに動き、子どもの様子はぬいぐるみのカメラ映像で祖父母宅のPCに映し出される。機械的な動きではなく、コミュニケーションの内容に沿った動きをするぬいぐるみに子どもは興味を示し、遠隔地にいても祖父母と孫のコミュニケーションが成り立つという仕組みだ。
かぞくぐるみは、室内だけでなく野外でも利用可能なため、「外に一緒に持って行くことで、おじいちゃん・おばあちゃんは孫が初めて自転車に乗った瞬間を一緒に喜ぶこともできるし、ピクニックに連れて行って同じ景色を楽しむこともできる」と宮村さん。このほか、入院中の児童がかぞくぐるみを通じて学校の授業に参加したり、乳幼児の見守り機能にも使えたりするなど、さまざまなユースケースを提案した。
アプリ部門の受賞チームを発表した審査員の齋藤ウィリアム浩幸氏(Intecur 創業者 兼 最高経営責任者)は、受賞チームをたたえ、「Spotは、2020年の東京オリンピックに向け、世界をスポーツという共通語でつなぐことのできる作品で、海外でも通用するだろう。また、かぞくぐるみは、日本の少子高齢社会の中でさまざまなコミュニケーションの方法があることを提案してくれた。両チーム共に、ICTのスピリットを使って人同士をつなげる点が印象的だった」と述べた。