新日鉄住金ソリューションズは5月8日、これまで「absonne」として提供していたクラウドサービスの名称を「absonne Enterprise Cloud Service」に変更すると発表した。また、プライベートクラウドの構築支援サービス「NSGRANDIR+」の名前も「absonne Enterprise Cloud Framework」に変える。システム構築や運用の要素を加えることで、クラウド事業としてのブランドを再定義する。
インフラ提供としてのクラウドサービスだけでなく、統合基幹業務システム(ERP)などのシステム導入や運用など、システムインテグレーターとしてのノウハウを生かしやすい事業を連動させることで、収益の向上を目指すという。absonneとしての売上高を現在の年間100億円から、3年後に200億円に引き上げる考えだ。
新日鉄住金ソリューションズの取締役を務める大城卓氏は「システム運用だけを受託するような形だと苦しいケースがある」と本音を漏らす。インフラを絡めて顧客の情報システムに入り込むことで、インフラの定期的な刷新などに関われるようになるという。結果として、アウトソーシングの案件などを取りやすくなるとのこと。今回の取り組みの背景にはこうした事情もあったようだ。
99.99%、TCO3割削減
クラウドサービスであるabsonne Enterprise Cloud Serviceでは、稼働率99.99%、総所有コスト(TCO)の30%削減、企業が持つオンプレミス環境と連携させるハイブリッドクラウドとしての運用を実現するという3つを実現するという。
顧客の環境で利用しているIPアドレスの持ち込み、セキュリティネットワーク機器の仮想アプライアンス化によってきめ細かいセキュリティポリシーを適用できることなどにより、オンプレミスと同等のセキュリティレベルを実現できるとしている。
仮想サーバ追加でサイロ化を阻止
一方、absonne Enterprise Cloud Frameworkでは、absonneとして提供するインフラアーキテクチャを使いながら、企業が所有する形のプライベートクラウド環境を構築することを想定している。
特に、システムを拡張する際に、仮想サーバを随時追加することで対応できるのが、クラウド技術を使う場合の利点という。従来は、部署ごと、プロジェクトごとにサーバを立ててシステムを拡張することで、システムがサイロ化して管理不能になることが多かったが、それを防止できるとしている。
また、absonne Enterprise Cloud Service上のシステムと同じネットワーク上で統合することもできるため、自社所有から月額利用に移行するまでの暫定措置として利用することも可能とのこと。
管理機能も強化
この日は、クラウドサービスの管理機能である「absonne Director」の強化も合わせて発表した。ウェブベースの管理インターフェースにより、データセンターに行くことなく、オンプレミスとクラウドを横断的に管理し、構成を変更できるとしている。
具体的には、ロードバランサの構成変更機能の強化や、OS上のサービス監視やログ監視機能も提供できるようにした。
現状の売り上げ100億円について、大城氏は「クラウドサービスと構築がそれぞれ50億円程度の半分ずつ」と話す。目標である3年後の200億円の内訳について、クラウドサービスの売上高増加を期待しており「少なくともクラウドサービスであるabsonne Enterprise Cloud Serviceを倍増させなくてはいけない」との考えを示した。