ITベンダーの間で技術者不足が大きく浮上してきた。各社は至急の対応を迫られているが、先々を考えるとさらに悩ましい問題が浮き彫りになってきた。
大型案件が目白押し
「システムエンジニア(SE)やソフトウェア開発などの技術者不足が深刻な問題になってきている」
NECの遠藤信博社長は、同社が4月28日に開いた2013年度(2014年3月期)決算の発表会見でこう語った。同社をはじめITベンダー各社のシステム開発事業の業績および受注状況は、企業などのIT投資が回復したことで総じて好調に推移しているが、一方で遠藤氏の言うように技術者不足の問題が大きく浮上してきている。
その背景には、公共や金融の分野を中心として2016年の稼働を目指した数千億円規模の大型システム案件が、ここにきて目白押しになってきた状況がある。
例えば、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)の運用開始に合わせた政府や地方自治体のシステム更新、日本取引所グループのデリバティブ(金融派生商品)売買システムの全面刷新、日本郵政の各種業務システムの全面刷新、みずほ銀行の勘定系システムの全面刷新・統合といった案件だ。
「技術者不足が深刻な問題になってきた」と語るNECの遠藤信博社長
技術者不足を補うために、ITベンダー各社はかねてオフショア開発を進めてきたが、難易度の高い大型システム案件をオフショアで対応するのは無理があるというのが業界関係者の一致した見方だ。ではどう対応するのか。
NECの遠藤氏は「グループ全体のリソースを最大限、有効活用する」と話した。このため、NECグループでは4月にソフトウェア子会社7社を統合し、重点分野にリソースを集中投資できるようにしたという。
また、日本ユニシスの黒川茂社長は、同社が5月12日に開いた2013年度(2014年3月期)決算の発表会見で、「長年、密接に連携してきたパートナー各社とリソースの共有や調整を図っていく」と語った。他のベンダーもグループ会社やパートナー企業とリソースをやりくりすることで、何とか乗り切ろうと考えているようだ。