インテリジェンスは、正社員領域からアルバイト・パート領域にまでわたる人材関連サービスの総合的な企業だ。一方、同社においてITアウトソーシングサービスに携わる人員数は2000人を数え、5000人近い全従業員数のおよそ4割を占めている。いま、同社ではITを1つの基軸としながら、事業構造全体を改革しようという試みが始まっている。この取り組みについて、IT関連の業務をリードする取締役兼専務執行役員の小澤稔弘氏に聞いた。
インテリジェンス 取締役兼専務執行役員 小澤稔弘氏
システム部門はITを知らない事業部門の言いなり?
同社のITを統括する部署はBI(Business Innovation)部門と呼ばれる。小澤氏は当初、大手システムインテグレーター(SI)に入社、ITコンサルティング会社を経て、大手電器メーカーの最高情報責任者(CIO)に就任し、インテリジェンスに入ったのはその後だ。「コンサルティング業務から、CIOに転じた。つまり、発注される側から、する側に変わったのだが、そこで分かったのは、事業部門の人々は、ITについての理解度や考え方の水準があまり高くはないということだった。企業がITを活用するには、システム開発事業者だけではなく、発注する側が変わらなければ、効果は期待できない」(小澤氏)と主張する。
小澤氏は、ITをさまざまな観点から捉えている。2008年にCIOに就任したほか、関連会社の代表も務める。変化を求められているのは、事業部門にとどまらない。「SI事業者側から見ると、IT部門に、仕様の詳細を聞いても、十分に答えられないということがあった。そこで、プロジェクトのキーマンにまず接触するのだが、契約窓口はIT部門だ。ほとんどの場合、彼らは事業部門からの指示を受け、テストだけをする。社内での地位もあまり高くないとの例が少なくなかった」(小澤氏)という。
かつて小澤氏が属していた電器メーカーでも状況は同じであり、「何かある」場合、事業部門にお伺いを立てなくてはならなかったという。このような体験から、「IT部門は受発注の窓口とテストに甘んじているのではなく、自社の業務プロセスを理解していなければならない」と感じるようになったという。
おいしいホワイトソースを作ろう
このような発想を原点に、小澤氏は、組織改革とともに「ITに強い、事業側の人材」との意味を込めた組織「BITA(Business IT Architect)」の育成を図った。「ビジネスイノベーション(BI)」が、改革のプロセスをコントロールできるようにしようと考えたのだ。例えば、BITAの要員が、SI事業者やITベンダーから、何かたずねられた場合、回答できず、事業部門に質問するとしたら、それは失敗。そのような意識を持って変革を目指した」(小澤氏)。
とはいえ、一人一人の意識を変えていくことは決して容易ではない。小澤氏は「配置転換もした。退職した人もいる。技術者といっても、インテリジェンスは事業会社であり、ITだけをガリガリやっていたいのであれば、IT専門の企業に移った方がいい。事業側、つまり、マーケティングと、ITが分離していてはいけない。いまや、ITはコモディティ(日用品)化しているわけで、営業部門でも、ITを使いこなせる水準に引き上げるべきだ」と話す。
例えばホワイトソースを作る場合、冷たい牛乳を小麦粉に入れても急には混ざらないという。少しずつ牛乳を足し、温度も徐々にあげていかなければ、きれいに混ざらない。小澤氏は事業部側の温度を上げる必要があることを説明するために、そんな例を引き合いに出した。