効果的な集合学習のための活用術
前編では、自己学習としてのスマートデバイスの活用について解説をしてきたが、集合学習を効果的に進めていくためにスマートデバイスをどのように活用していくのかを次に解説していく。
学習の定着率は、Passive型(受身の講義)とActive型(参加型の講義)を比較すると、格段にActive型が高い(図参照)。しかし、ワークショップなどに代表される参加型の研修の場合でも参加メンバーによっては、ワークショップがなかなか盛り上がらないという経験はないだろうか。
これはファシリテーターのスキルに依存するケースもあるが、シャイな日本人はお互いに共通点を見出すのに時間がかかり、話題の突破口に気づいた頃には研修が終わってしまうケースを経験している人も多いはずだ。単純な表現をすれば、盛り上がるような席次、つまりマッチングをしてくれれば、何の問題もない。
面白い事例を1つ、ご紹介したい。
Delta Air LinesはLinkedInと協力し、未来のビジネスリーダーと現在のビジネスリーダーとを機内で結びつける「イノベーションクラス」というサービスを開始した。これはLinkedInの会員へ各業界のビジネスリーダーに直接話を聞く機会を提供するために、Delta Air Linesが予約されていない空席とこれから航空券を予約しようとしている人をマッチングして座席しているというサービスであり、非常に興味深い。
こうしたマッチングが集合研修の場でも提供できれば、どうだろうか。このDelta Air Linesの場合は、LinkedInの会員であることや事前に申し込みをすることが前提となるが、社内の場合、日頃からの社内でのコミュニケーションログ(メールや企業向けSNSなど)を活用し、類似性の高いメンバーで集合研修のチームが組めれば効果的な研修となるに違いない。
一般にイノベーションや新たな発想は、脳科学的な見地から説明すると、多様性のある人々(しかし、実際は共通項のある)を偶発的に出会わせることで生まれると言われている。これがもし、「意図して」偶発的に出会わせることができれば、研修の場だけでなく、プロジェクトチームや人事異動などさまざまなシーンでも活用することができる。
筆者は、このマッチング手法を活用した人材の育成や教育手法、人材配置の方法を次世代のタレントマネジメント手法の1つして考えている。