「エンタープライズモバイルの時代」と題して、2013年9月から連載を続けてきた本稿は、今回が最終回となる。これまでの総まとめをしながら、エンタープライズモバイルの将来と今後の可能性について検討していきたい。
コンピューティングパワーの広がりはこれからが本題
これまでに述べてきたように、スマートデバイス(スマートフォンやタブレット)は、年々出荷台数を伸ばし、IDCの予測では2015年にはモバイルPCの出荷台数をタブレットが抜く予測となっているほどだ。
タブレットおよびPCの出荷台数予測(世界)
これは、スマートデバイスがこれまで、コンピューティングパワーの恩恵を受けることができなかった製造ラインや建設、接客の現場など、いわゆるフィールドワークと言われる分野への導入が本格化し、非常に大きな影響を与えているものと想定されているからだ。
タブレットを利用している社員の職種と今後の意向
また、ユーザー自身がスマートフォンやタブレットを自由に使いこなし、その利便性を体感してしまったことにより起こる「ITのコンシューマライゼーション(ITの民主化)」は、シャドーITを含むBYOD(Bring Your Own Device:私物端末の業務利用)への欲求をユーザーにもたらし、逆戻りできないところまできていると言っても過言ではない。
今後、IoT(Internet of Things:モノのインターネット化)などのセンサ技術やウェアラブルデバイスなどの登場により、フィールドワークの現場ではさらに、ICT化が加速することは容易に想定することができる。
2020~2030年頃には、仕事の多くは、エージェントと呼ばれる機械たちと協働するような時代となり、コンピューティングパワーの恩恵を無意識のうちに利用している時代がくるのではないかと筆者自身は予測している。
何のために、そして、誰のためにスマートデバイスを導入するのか
さて、そのような素晴らしいテクノロジを「何のため」に利用するのか。それを考える重要性についても触れてきた。それは「スマートデバイス導入における落とし穴--上」 で解説したグランドデザインを設計することの重要さである。スマートデバイスの導入意欲は、決して低くはないと理解しているが、残念ながら、導入した企業の満足度は、半分程度に留まっている。
逆の解釈をすると、半分の企業は、導入効果を得られていないと感じていると理解するのが、普通であろう。しかし、図に示すように、もう半分の企業のうち「どちらともいえない」と「わからない」をあわせると約6~7割は、導入の効果があったかどうかすら、把握できていないのが実態である。いわゆる「とりあえず導入」である。
タブレット導入に関する満足度