スマートデバイス導入を成功裏に進める要諦
ToDo1:グランドデザインの設計
- スマートデバイスを導入して何を実現したいのか定義できているか
- スマートデバイスを導入すると「何が」、「どう」変わるのか定義できているか (どんな働き方になるのか)
- 経営にはどんな効果が出るのか評価指標(KPI)を定義できているか
ToDo2:ロードマップの設計
- 何をいつまでに実現するべきなのか(必ずしも一度にすべてやる必要はない)
- 「どの機能」を「いつ」リリースするのか
- 段階リリースの予定があればスケジュールを可視化しているか
ToDo3:ペルソナデザイン
- どんな人が使うのか定義できているか
- 年齢、性別、ライフスタイル、性格、リテラシーなどを決定した上で、利用時 のシーンを具体的な物語として定義できているか
エンタープライズモバイルはワークスタイル変革を実現するのか
さて、ここまでに、スマートデバイス導入を成功に導くためのポイントを改めて整理をしてきたが、進めていくにあたり落とし穴があることを補足しておきたい。
「スマートデバイス導入における落とし穴--下」」でも解説した、「人事・労務的な問題」と「ユーザー自身の業務が変わることに対する心理的な抵抗」の2点である。
エンタープライズモバイルは、ワークスタイル変革の入口として注目を浴びているのは事実だが、実際に本来の目的を遂げるには、さまざまな変革があわせて求められるケースがある。ワークスタイル変革への取り組みそのものが、ユーザー部門単独、または情報システム部門単独での取り組みで実現することが難しいということを意図している。
エンタープライズモバイルの導入とは、先に述べたように、働き方そのものを変革していくことであり、単なるITツールの導入ではない。スマートデバイスなどの導入によるICT環境の変化は本来、さまざまな規程類の変更を余儀なくすることがある。例えば、いわゆる日系企業の多くは、外部にPCを持ち出すことができるのはまだ、30%程度しかないのが実態だ。
人事制度上、社外でも業務ができるようになるタブレットやスマートフォンを従業員に持たせるには、在宅勤務制度や見なし残業などの制度の整備が必要となるケースもある。つまり、情報セキュリティの問題を技術的にクリアしてもなお、人事や総務部門からの抵抗があるケースは決して少なくはないことを紹介してきた。
また、スマートデバイスの導入を求めてきたユーザー自身が、例えば在宅勤務を認められ、直接上司や同僚と会う頻度が少なく済むようになると、今度は、自分のパフォーマンスは正しく評価されているのかといった、不安を持つことも少なくない。働き方が変わることに対する心理的な抵抗が最後に残る人もいるため、丹念にコミュニケーションが必要であるという点も忘れずに準備を進めなければならない。
過去には、エンタープライズモバイルを導入する際の隠れた課題(落とし穴)であるとして紹介してきたが、これも多くの企業がうまくクリアできるようになってきているようだ。