米VMwareは8月25日、同社の年次テクニカルコンファレンス「VMworld 2014」で垂直統合型システム「VMware EVO:RAIL」を発表した。同社が「“Software-Defined Data Center(SDDC)”を最速で導入できるハイパーコンバージドインフラ」と銘打つ同製品は、「ITに明るくない総務部の担当者でも設定できるほど」(同社)簡単に導入できるのが最大の特徴。初日の基調講演に登壇した最高経営責任者(CEO)のPat Gelsinger氏は、「電源を入れてから15分でSDDC環境が手に入る」と、そのメリットを強調した。
中堅企業での利用を想定しているEVO:RAILは、ハードウェアやソフトウェア、サポート費用、サービス費用がすべて包含されており、単一の構成単位としてパートナーが販売する。最初のOEMパートナーは、富士通、ネットワンシステムズ、Dell、EMC、Inspur、Supermicroの6社で、ネットワンシステムズは10月1日から販売を開始する予定だ。
VMwareの新たな製品ファミリーとなる「EVO」シリーズ
VMware CEOのPat Gelsinger氏は基調講演後の記者会見でも「EVO:RAILは、SDDCを最速で導入できるアプライアンス」とそのメリットを強調した
ネットワンシステムズ 執行役員 CMOの篠浦文彦氏。「EVO:RAILの登場でSDDC市場の裾野は確実に広がる」と語った
ソフトウェアは、ハイパーバイザ「VMware vSphere」やストレージリソースを仮想化するソフトウェア「VMware Virtual SAN」、「VMware vCenter Log Insight」、「Railsエンジン」などで構成され、事前に検証されている。Railエンジンは、EVO:Rail専用の管理ツールであり、独自のGUIを備えるほか、ソフトウェアアップデート機能、パッチの自動適用機能などを提供する。
ハードウェア構成は2Uの4ノードで、各ノードは2つのCPUと192Gバイトのメモリを搭載。1台で100台の仮想サーバ、もしくは250台の仮想クライアントをサポートし、Virtual SANは最大13Tバイトまで対応する。アプライアンスはリニアで拡張可能とし、「わずか数クリックで完了する」(同社)という。
EVO:RAILのアドバンテージとして同社は、「導入の簡素化による運用コストと設定工数の大幅な削減」「自動スケールアウト」「ソフトウェア管理の自動化」を挙げる。
OEMパートナーの1社である、ネットワンシステムズ 執行役員で最高マーケティング責任者(CMO)の篠浦文彦氏は、「システムインテグレーターの立場で言えば、設定工数が大幅に削減したことで、これまでVMware製品の導入に二の足を踏んでいた企業にも積極的に販売できる」と、売る側のメリットを説明する。
EVO:RAILはハードウェアの基本構成が決まっているため、各OEMベンダーの差異化ポイントは、サポートメニューの充実がカギとなる。篠浦氏は、「例えば、独自のサポートエージェントやモニタリング機能の標準搭載など、ユーザーに運用負担をさせないようサポートする。さらにユーザーのニーズにあわせて事前検証した個別ソリューションをあらかじめ組み込んで提供する」と語る。現時点で価格は未定だが、「個別に購入するよりも低価格で提供する」(篠浦氏)という。
VMwareは、EVOファミリーの一環として「VMware EVO:RACK」のテクノロジプレビューも公開した。EVO:RACKはデータセンターなど、EVO:RAILよりも大規模な環境を想定したアプライアンスとなっている。
展示ブースでは、各社の製品が展示されていた(写真はネットワンシステムズ)。最大4アプライアンス、16ノードまでスケールアウトできる