米VMwareは8月25日から28日までの4日間、サンフランシスコにおいて、同社の年次テクニカルコンファレンス「VMworld 2014」を開催している。今年で11回目を数える同コンファレンスには、世界各国から約2万2000人を超えるパートナーや顧客らが参加した。日本からも約300人が参加している。会期中は、45のハンズオンラボをはじめ、400のテクニカルセッションなどが開催される予定だ。
今回のカンファレンスのテーマは「No Limits(限界はない)」。現状や既成概念に制限されることなく、新たな環境や技術を積極的に取り入れてほしいとの願いがこめられている。この“新たな環境”とは、同社が推進する「Software-Defined Data Center(SDDS)」を意味する。

CMOのRobin Matlock氏

CEOのPat Gelsinger氏は、何度も「Brave(勇気)」という単語で現状打破の必要性を訴えた
初日の基調講演に登壇した、同社最高マーケティング責任者(CMO)Robin Matlock氏は「何か変化を起こすとき、既存概念や現状がバリアになることがある。例えば、ゴールデンゲートブリッジを建設するとき、合意形成を得られるまで10年を要した。同様に、SDDCを実現するためには、既存の(ハードウェアで定義された)アーキテクチャがバリアになることもある。しかし、リミットを設けずに変革してほしい」と呼びかけた。
続いて登壇した同社最高経営責任者(CEO)のPat Gelsinger氏は、ビジネスを取り巻く環境の“流動性”を強調、既存のビジネスが“流動化”し、新たなサービスが生まれていると指摘した。
「労働環境も、オフィスで働くスタイルから、いつでもどこでも働けるモバイルワークスタイルになっている。産業界でも、配車サービスの『Uber』のように(自動車という)資産を持たずに新ビジネスを提供している企業もある。こうしたリスクを恐れず、現状を打破する『Brave(勇気)』を持つことが重要だ」(Gelsinger氏)
同氏は、「こうした現状を打破する勇気は、われわれにも必要だ」と聴衆に訴えた。
「例えば、データセンターを構築、運用する際、IT部門は本質的に異なる2つのアプローチを二者択一する必要があった。それは従来のアプリケーションを利用するかクラウドアプリケーションにするか、オンプレミス(プライベートクラウド)かパブリッククラウドか、利便性を取るかセキュリティを採用するかの選択である。しかしSDDCは、こうした二者択一のアプローチを両立させるものだ。異種混在のクラウド環境の構築や物理環境の管理、オープンなフレームワークへの対応など、あらゆるハードウェア上での稼働が可能となっている」とGelsinger氏は語り、SDDCの必要性を強調した。

SDDCの実現で今までは二者択一のアプローチしかできなかった環境を「and」(両立)できるというのがVMwareの見解だ
OpenStackのディストリビューションやDockerとの協業も
今回のコンファレンスでは、既存製品のアップデートのほか、オープンソースのIaaS環境構築管理ソフトウェア「OpenStack」のディストリビューションやDocker、Googleとの協業、さらに垂直統合型システムの「VMware EVO:RAIL」などが発表された。
既存製品のアップデートでは、クラウド基盤スイート製品である「VMware vCloud Suite」のバージョンが5.8となり、ポリシーベースのプロビジョニング機能が大幅に強化された。保護対象の仮想マシン数が従来の5倍に拡張され、同スイートに包含される「VMware vCenter Server」1台あたり最大5000台まで保護できるという。
異種混在のデータセンター環境やハイブリッドクラウドの管理製品を1つのプラットフォームに統合した「VMware vRealize Suite」も発表された。同スイートは、「VMware vSphere」などのハイパーバイザをはじめ、物理インフラやIaaS/PaaS「Amazon Web Services(AWS)」など外部のクラウドサービス環境で稼働するITサービス向けに、包括的に管理スタックを提供する。
主な機能としては、サービス ポータル/カタログや、APIを通じてポリシーに応じたアプリケーションやインフラサービスをオンデマンドで提供する。パブリッククラウドの料金比較、ワークロード配置の最適化など、インフラサービスのコスト管理、測定、分析機能も提供する。