本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ヴイエムウェアの三木泰雄 代表取締役社長と、日本オラクルの桐生卓 執行役員の発言を紹介する。
「クラウドサービスはこれからハイブリッド型が主流になっていく」
(ヴイエムウェア 三木泰雄 代表取締役社長)
ヴイエムウェアの三木社長が先頃、グループ会社であるEMCジャパンが都内ホテルで開催したプライベートイベント「EMC FORUM 2014」で基調講演に登壇した。三木氏の冒頭の発言はその講演で、クラウドサービスの今後の方向性について語ったものである。
ヴイエムウェア 三木泰雄 代表取締役社長
三木氏はまず、ITの利用形態が今、これまでのクライアント/サーバ(C/S)環境からモバイル/クラウド環境へと移行しつつあると述べたうえで、「この変化に求められる技術は従来の延長線上にあるものではなく、全く違うものである」と指摘した。
一方で、「とはいえ、企業はC/S環境での既存のアプリケーションを引き続き利用していかなければならない。となると、既存のアプリケーションの運用コストを抑えながら、新しいモバイル/クラウド環境への対応を図っていくのが懸命だ。当社が提供する仮想化技術が、そうした2つの環境の架け橋となる」と語り、同社が市場をリードする仮想化技術の必然性を強調した。
三木氏によると、ヴイエムウェアは今、仮想化技術をベースとして「ハイブリッドクラウド」「SDDC(Software-Defined Data Center)」「エンドユーザーコンピューティング」の3分野に注力しているという。その中で、筆者が興味深かったのは、同社のハイブリッドクラウドへの力の入れようだ。
三木氏は米Gartnerの調査データを示しながら、「2013年から2017年までのIT支出増加率を見ると、パブリッククラウドが25%でプライベートクラウドが4%と、パブリッククラウドの高成長が見込まれている。ただ、企業における2014年の投資額見込みからすると、パブリッククラウドの440億ドルに対しプライベートクラウドは2兆ドルと遥かに大きい。したがって、どちらか片方だけではなく両方を連携して、プライベートクラウドからパブリッククラウドも利用できるハイブリッドクラウドが今後最も求められるようになるというのが、当社の見方だ」と説明した。同氏の冒頭の発言は、その決め台詞である。
こうしたハイブリッドクラウド化に向け、同社ではこのほど米VMwareが昨年秋に北米で提供を開始したパブリッククラウドのIaaS「VMware vCloud Hybrid Service」を日本でも提供すると発表した。同ソリューションは、プライベートクラウドを含めたオンプレミスのITインフラをパブリッククラウドに拡張できるものだ。つまり、ハイブリッドクラウドを実現するためのパブリッククラウド向けソリューションである。