ソニー代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の平井一夫氏は、9月にドイツ・ベルリンで開催された「IFA 2014」で報道関係者のインタビューに応えた。“感動軸”を中心としたモノづくりの姿勢を加速する考えを強調。ウェアラブル端末に対する基本的な考え方などについても述べた(編集部注:2015年3月期決算見通しの下方修正を発表した9月17日以前にインタビューした)。
好奇心を刺激して感動を届ける
――IFA 2014でいくつかの新製品を発表している。
ソニー 代表執行役社長兼CEO 平井一夫氏
IFA 2014では、モバイルコミュニケーション分野でソニーの最新技術を結集した「Xperia Z3」を中心に発表しました。デジタルイメージング分野では、レンズスタイルカメラを充実させ「QX30」「QX1」を発表。オーディオ分野ではハイレゾ対応の新製品として7機種を発表しました。
この中には、ハイレゾとしては世界最軽量となるWalkmanも含まれています。今秋に欧州で発売する4K曲面ディスプレイも展示しています。「Life Space UX」も4Kの超短焦点プロジェクタへと進化させ、9月に米国で発売し、来夏までには日本市場に導入する予定です。
CEOに就任してから語っているのは「お客様の好奇心を刺激して、感動を届ける」ということ。メッセージはずっと変わっていません。これに沿った製品展開を進めており、今回のIFA 2014では、その流れにある新たな製品を紹介できたと考えています。
――今回の発表では、ハイレゾオーディオはポータブル領域に力が入っているように見えます。
これまで展開してきた据え置き型のハイエンド機種から普及型までさまざまな形での商品展開ができたと考えています。普及価格帯のWalkmanでもハイレゾ対応にしてほしいという声にも応えました。技術者からは、ポータブルヘッドフォンアンプでバランス型をやりたいという声が上がり、私も「これはおもしろい。ぜひ徹底して掘ってほしい」とお願いをして、それが今回、実現した。
ソニーは、ポータブルでもここまで徹底して楽しんでもらうんだ、というこだわりが伝わったのではないでしょうか。ソニーの技術は、オーディオが原点。オーディオはもう終わりじゃないか、と言われて久しいがまだまだ市場性はあると感じています。これからも、ハイレゾ対応機器は、普及価格帯にも提供したいと考えています。
ただ、業界全体で注意しなくてはならないのは、ハイレゾと言いながらも“安かろう悪かろう”というイメージになってはいけないということ。顧客の体験を大切にして、大事に育てていきたい。ハイレゾオーディオも感動軸の製品です。ソニーは、日本オーディオ協会を通じて、ソニーが制作したハイレゾオーディオのロゴを無償で使ってもらえるようにしています。業界全体として統一感を演出することも大事な活動のひとつだと思っています。
家庭用コンソールだからこそ体験できる“厚み”
――「PlayStation 4」の事業展開はどう自己評価していますか。
PlayStation 4の出荷はすでに1000万台を超えました。当初想定した数値で言えば、「ここまでできたらすごいよね」と言っていた数字の中では、結構上の方になっています。ただ、日本はもう少しがんばった方がいいと思っています。
この成果の背景には、感動してもらうための仕掛けがうまい形で花を開いたことが大きいと思っています。PlayStation 4を出すまでは、「スマホがあれば、家庭用のホームコンソールはいらないのではないか」とも言われていました。そこで、われわれが徹底的に議論したのは、スマホでは体験できないものは何か、ということでした。大画面で楽しむからこそわかるものやクリエイティブな体験もあります。また、「PlayStation 3」の反省として、開発環境もより容易に提供できるようにした。
そして、何と言っても、今までのゲームプレイの体験を超えて、ソーシャルに担保した。自分のゲームプレイを全世界に向けて配信するといったように、単なるゲーム体験ではなく人と関わりあうことができるプラットフォームにしました。
これらが、家庭用コンソールだからこそ体験できる“厚み”の部分だといえます。これからも“ゲーム+α”が重要だと考えています。発売当初は、コアなゲーマーが評価してくれるようなプラットフォームを作ることに力を注ぎましたが、これから大切なのは、いかにライトユーザーにアピールできるか。それでいて、コアのゲーマーにも楽しいと思い続けてもらわなくてはならない。このバランスを取ることが成長の鍵になると考えています。