Microsoft Researchは、OS技術「Drawbridge」をベースに、クラウドの安全性に対する信頼性を高める新技術「Haven」の開発に取り組んでいる。
Microsoftは、「Shielding Applications from an Untrusted Cloud with Haven」と題する論文でこの新技術を説明している。論文は、コロラド州ブルームフィールドで今週行われている第11回のUSENIX Symposium on Operating Systems Design and Implementationで紹介された(論文へのリンクを教えてくれたTwitterユーザーの「WalkingCat」氏に感謝)。
Microsoftは、Havenのプロトタイプを作成し、この技術の目的と設計を先述の論文で紹介した。
Microsoftの研究者であるAndrew Baumann氏、Marcus Peinado氏、Galen Hunt氏が説明しているように、現在のクラウドはプロバイダーがユーザーのすべてのデータにアクセスできる。しかしHavenを使えば、こうしたアクセスを排除できるという。元NSA契約職員のEdward Snowden氏が明らかにしたようなデータ漏洩におびえる顧客は関心を持つのではないだろうか。
研究者らはHavenについて、「信頼できないクラウドホスト上にある未修整のサーバアプリケーションを安全に隔離された環境で実行」することで、「クラウドのための真の『ユーティリティコンピューティング』モデルに一歩近づく。このモデルにおいて、ユーティリティはリソース(プロセッサコア、ストレージ、ネットワーキング)を提供するが、ユーザーのデータにはアクセスできない」と説明している。
論文では、信頼できないOSからアプリケーションを隔離するアプローチはすでにいくつかあるとして、「XOMOS」「Proxos」「Overshadow」「CloudVisor」「SecureME」「InkTag」「Virtual Ghost」などの例を挙げている。しかし、信頼できないOSからアプリケーションのメモリを保護するだけのシステムは、システムコールインターフェースを介したイアーゴ(Iago)攻撃に弱いと研究者らは説明している。
論文によると、「Havenは、LibOS(ライブラリOS)、シールドモジュール、および十分に小さく(約20コール)相互信頼のないホストインターフェースを使うことで、イアーゴ攻撃を無効にする設計になっている」という。また、「Software Guard Extensions」(SGX)の力を借りることで、信頼できるハイパーバイザーが必要なくなる(SGXは、ソフトウェアを保護するためのIntelのアーキテクチャ拡張だ。一連の新しい命令セットとメモリアクセスの変更からなり、悪意ある特権コードやハードウェアへの攻撃からアプリケーションを保護するように設計されている)。
Havenの土台となっているのは、「異なるプラットフォームをまたいでソフトウェアを実行するために必要な仮想マシンに取って代わることを目指した仮想化の1形態」であるDrawbridgeだ。Drawbridgeは、ピコプロセスとライブラリOSという2つの中核要素からなる。ピコプロセスは、分離されたセキュアなコンテナで、ハードウェアのアドレス空間から構築されているが、従来のOSサービスやシステムコールにはアクセスできない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。