日本ヒューレット・パッカード(HP)は10月2日、第9世代となるx86サーバ「HP ProLiant サーバー Generation 9(Gen9)」の提供を開始した。業務や用途に応じたコンピューティング環境を提供する“ワークロード特化型”サーバを掲げた。
Gen8の特徴だった“自働化”を引き継ぎ、ビジネス貢献と総所有コスト(TCO)削減の両立を図った。全機種でCPUにXeon E5-2600 V3ファミリを採用。価格は高さ1Uのラックマウント型「DL160」が29万円から。
Gen9の特徴となるワークロードは、「汎用ビジネスアプリケーション」「ミッションクリティカル環境」「ビッグデータ、HPC、ウェブスケールアウト」「仮想化/クラウド環境」の4つからなる。
今回提供を開始した第1弾では、汎用ビジネスアプリケーション特化型としてラック型やタワー型のDL160や「DL180」「DL360」「DL380」「ML350」を、仮想化/クラウド環境特化型としてブレードの「BL460c」を、ビッグデータ、HPC、ウェブスケールアウト特化型としてHPCシステム「HP Apollo System」のモジュールである「XL230a」「XL730f」をそれぞれ用意した。
日本HP 執行役員 エンタープライズグループ事業統括 HPサーバー事業統括本部 事業統括本部長 手島主税氏
執行役員 エンタープライズグループ事業統括 HPサーバー事業統括本部 事業統括本部長 手島主税氏は、「ProLiantは25周年を迎え、73四半期連続でのx86サーバベンダーナンバーワンを達成した。これからの25年もHPがリーダーシップを取っていく。そのためにサーバを“Compute”というビジョンとして再定義した」と説明した。
ここで言うComputeとは、HPが次世代データセンターの構成要素として必要となるサーバテクノロジのビジョンで、コンピューティングリソースがワークロードに対してきめ細やかに対応することを示したものだという。こうしたビジョンを推進する理由として、手島氏は「現顧客のワークロードが多様化したこと」「サーバ、ストレージ、ネットワーク、デバイス、クラウドといったすべての環境を有機的に統合する必要がでてきたこと」「トップベンダーとして新しいチャレンジを行う必要があること」の3点を挙げた。
ワークロード多様化というのは、かつてのようなリレーショナルデータベース(RDBMS)にデータを格納するといった単一のワークロードだけでなく、分散並列処理プログラミングフレームワーク「Apache Hadoop」やインメモリなどを組み合わせたワークロードやリアルタイム性や高可用性が求められるシステムが必要になったことだという。環境の統合については、タブレットやプリンタなども含めて、すべての環境で製品を展開するHPだからこそできることだとした。
トップベンダーとしての新しいチャレンジという点に付いて「HPは、研究力、実行力、知的財産をもって2019年にむけて“The Machine”という基盤を構築すべく取り組んでいる。他社はこれから(サーバの革新に)取り組んでももう遅い」と話した。知的財産の代表としては、ワークロードに特化した各種システムオンチップ(SoC)、銅線ではない、光による広帯域ネットワークであるPhotonics、ユニバーサルメモリMemristorの3つがあると説明した。
手島氏は「2014年は特化型元年に位置づけ、カテゴリごとに大きなイノベーションを推進していく」と力を込めた。
日本HP エンタープライズグループ事業統括 HPサーバー事業統括本部 HPサーバー製品統括本部 統括本部長 橘一徳氏
エンタープライズグループ事業統括 HPサーバー事業統括本部 HPサーバー製品統括本部 統括本部長の橘一徳氏は新サーバの改善点として、「データセンターのコスト効率の改善」「サービス導入のスピードを加速」「ワークロードに応じた性能の最大化」の3点を挙げた。
データセンターのコスト効率の改善という点では、パワーサプライの25%小型化、ストレージソフトウェア「HP Store Virtual VSA」を使った共有ストレージによるコスト削減、室温45℃環境での動作保証(ASHRAE=米国暖房冷凍空調学会が定めた基準の“A4”に準拠)による20%省電力化など、コスト効率が大きく向上していることを説明した。「3倍のCompute容量をより低いTCOで稼働させることができるようになった」(橘氏)
製品名 | 税別価格 | |
---|---|---|
ブレード | BL460c | 48万1000円~ |
ラックマウント | DL160 | 29万円~ |
ラックマウント | DL180 | 33万3000円~ |
ラックマウント | DL360 | 51万5000円~ |
ラックマウント | DL380 | 57万9000円~ |
タワー | ML350 | 34万円~ |
Apollo向けモジュール | XL230a | 46万7000円~ |
サービス導入のスピート加速という点では、Gen8から引き継いだ自働化をさらに進めることで「66倍速いサービスイン」を可能にしたという。具体的には、ハードウェアを収集するiLO機能や「HP OneView」というビジュアルなデータセンター管理ツール、RESTful APIを使ったクラウドサービスとの連携などを強化した。
ワークロードに応じた性能の最大化については、新たに12Gb SASに対応し、4.8倍の書き込みIOPSを実現した内蔵ストレージ「HP SmartStorage」、SSDとHDDを組み合わせて書き込みIOPSを4倍に向上させたキャッシュシステム「HP SmartCache」、「VXLAN」や「NVGRE」といったプロトコルの処理をNICにオフロードする機能やRDMA(Remote Direct Memory Access)に対応したネットワークアダプタ「HP FlexFabric CNA」を挙げた。