サイバーエージェントが10月30日、スマホシフトを完了したとのメッセージを公表した。これを受ける形で、同社の10月31日の午前の株価は8%以上も上がっている。
一般に、スマートフォンビジネスの売り上げ要因として挙げられるのは、アプリ購入や月額利用料、インターネット広告の収益も加わる。インターネット広告は、従来からの純広告やメール広告に加え、最近になってアドネットワーク上でリアルタイム入札(RTB)などを実施するいわゆるアドテクノロジを利用したものの比率が上がってきている。
アドテクノロジへの評価は、必ずしもポジティブなものだけではなく、「インプレッション単価が低い」などの不満の声も聞こえてくる。だが、大きな流れの中で、市場全体としては確実に伸びているようだ。
7月2日に東証マザーズに上場したVOYAGE Groupは、10月30日に2014年9月期通期(同社の会計年度は10~9月)の決算結果を発表した。メディア事業とアドテク事業の2本柱を軸に、前年比52%増の売上高150億4000万円と過去最高を達成した。
特に、アドテクノロジ事業は対前年比81%増の73億9000万円とこちらも過去最高売り上げを更新。媒体社向け広告プラットフォームであるSSP(Supply Side Platform)事業「Fluct」のシェアが拡大しているのが直接的な要因という。7~9月の第4四半期の売り上げを見ても、前年比48.6%増と足元の調子も悪くない。
同社の代表取締役社長を務める宇佐美進典氏は「スマートフォン向けが着実に伸びている。一方でPC向けは頭打ち」と話した。
Fluctの配信インプレッション数の推移を見ると、7~9月で668億と前年の442億から比べて51%増えており、スマートフォン向けでのインプレッション増加分が全体を押し上げているという。
スマートフォンメディア向けの内訳については「アプリとウェブのどちらを優先するかを考えたときに、アプリの場合は“継続しにくい”、一方でウェブメディアの場合は“継続しやすい”と判断し、ウェブを中心に展開していた」という。だが、実際には「想定よりもアプリからの利用が多かった。今後はスマホネイティブアプリ向けSSPをより積極的に展開する」(宇佐美氏)としている。
広告主はどんな状況か。SSPサービス提供側としては把握しにくいとしながら「ソーシャルゲーム事業者が多いという印象はある。最近は(ニュースアプリなど)テレビCMを打つ企業も出てきており、スマホでのアドネットワークの出稿が増えている」と説明。広告主の構成も徐々に変化する可能性に触れた。
ネットメディア市場における広告商品の今後のトレンドについて、宇佐美氏は、現状はメール広告とディスプレイ/純広告が半分、RTB/アドネットワークが半分という比率を示した。将来的には、後者のRTB/アドネットワークが、現状のディスプレイ広告や純広告の数字を吸収しながら、全体の9割を占めるようになると指摘している。
シード・プランニングとサイバーエージェントは、共同で実施した国内アドテクノロジ広告の市場動向の調査結果を9月3日に発表した。2014年の市場規模は前年比141.1%の2258億円になると指摘。2017年には3291億円にまで増加すると見込む。アドテクノロジ市場は、議論を経ながらも、モバイル向けを中心に今後もしばらくは成長曲線を描く公算が高い。