本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米IBMのVirginia Rometty 会長・社長兼最高経営責任者(CEO)と、日本ユニシスの黒川茂 代表取締役社長の発言を紹介する。
「これからの経営は、新たなデータ活用技術を駆使して事実を根拠にした楽観主義で行くべきだ」 (米IBM Virginia Rometty 会長・社長兼CEO)
米IBMのVirginia Rometty 会長・社長兼CEO
日本IBMが先ごろ、プライベートイベント「THINK Forum Japan」を都内ホテルで開催した。冒頭の発言は、同イベントで講演した米IBMの Virginia Rometty(バージニア・ロメッティ)社長・会長兼CEOによるデータ活用に向けた提言である。
Rometty氏は講演で、「世界では今、3つのテクノロジによる大変革が同時に進行している」と切り出した。3つのテクノロジとして挙げたのは、「データ/アナリティクス」「クラウド」「エンゲージメント」。これらはIBMが今、戦略事業と位置付けている分野である。
まず、データ/アナリティクスについては、「ビッグデータは新たな天然資源ともいえるが、これからはその分析力が問われる。世界ではすでに4社のうち3社がビッグデータを戦略的に活用しようとしており、企業としての競争優位を生み出す大きなテーマとなっている」との見解を示した。
また、クラウドについては、「これから新しく開発されるソフトウェアの90%がクラウド対応型になる」「企業の70%はさまざまな利用形態を組み合わせたハイブリッドクラウドを採用するようになる」との見方を示し、「この2つが交差するところに新たな発見があるかもしれない」と語った。
そして、エンゲージメントについては、「モビリティとソーシャルネットワークの世界が広がりつつある中で、人と人だけでなく、人と機械、機械と機械といったように1対1のつながり、すなわちエンゲージメントがこれからさまざまな価値を生み出すようになってくる」と説明した。
その上で、同氏は「これらの新たなテクノロジが同時進行で広がりつつある中で、これまで解決できなかったさまざまな問題が解決できるようになってきた。まさしくビジネス、ひいては社会全体を大きく変革していくだろう」と強調した。
そうした中で、IBMはどのように貢献できるのか。同氏はその一例として、幅広い用途が期待されている同社の人工知能コンピュータ「Watson」を挙げた。Watsonの具体的な利用例として、米国の医療機関で乳がんの治療に使われているケースを紹介。医療データや文献など1200万ページの資料をもとに患者に応じて適切な治療法を導き出し、医師の判断を支援しているという。