この事例を踏まえて、同氏が語ったのが冒頭の発言である。「事実を根拠にした楽観主義」とは、同氏自身も経営者としてそうありたいと考えているのだろう。ユニークな表現だが、とりわけビッグデータ活用が企業経営にもたらすものという観点で捉えると、経営者に響く言葉かもしれない。
「6年前から手掛けているクラウド事業のノウハウを生かしていきたい」 (日本ユニシス 黒川茂 代表取締役社長)
日本ユニシスの黒川茂 代表取締役社長
日本ユニシスが先ごろ、2014年度上期(2014年4~9月)連結決算について記者説明会を開いた。黒川氏の冒頭の発言は、その会見の中で、クラウドサービスにおける同社のアドバンテージについて語ったものである。
2014年度上期連結決算については、売上高が前年同期比4.9%減の1219億円、営業利益が同39.6%増の34億円、経常利益が同29.0%増の35億円、純利益が同19.4%増の20億円と減収増益となった。前年同期に金融機関向けの大型案件を受注した反動で減収となったものの、利益率が上がって不採算案件が減少したことから増益となった。
2014年度(2015年3月期)通期業績については、売上高で前年度比0.8%増の2850億円、営業利益で同25.3%増の120億円、経常利益で同15.0%増の113億円、純利益で同18.9%増の75億円との期初の予想を変更していない。
同社では2012年度から中期経営計画に取り組んでおり、2014年度がその最終年度となる。同計画では、システムインテグレーション(SI)や運用・保守サービスといったコアビジネスの拡大によって収益基盤の安定化を図るとともに、顧客との共創/BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)ビジネスモデルの確立や社会基盤ビジネスへの進出によって持続的な成長軌道を形成していくという方針を打ち出してきた。その進捗について黒川氏は「重点戦略の“点”の実績が“線”につながり始めており、確実な実績が出ている」としている。
クラウド事業については、パブリッククラウドやプライベートクラウドを合わせて複数のクラウドサービス利用を支援する“クラウドフェデレーションサービス”に注力している。その一環として同社はこのほど、クラウドサービス基盤「U-Cloud IaaS」のサービスメニュー体系を見直し、新たに「U-Cloud IaaS Select」を11月から提供開始した。高品質から低価格まで3つのサービスメニューを用意し、「選べるクラウド」と銘打っている。
黒川氏によると、今後はさらにAmazon Web Services(AWS)などの外部のパブリッククラウドとも連携を図っていく構えで、そのためのエンジニアの育成に力を入れているという。冒頭の発言のように、同社はクラウド事業に早くから着手しているが、そのアドバンテージを言葉通りに生かしていくことができるか、注目しておきたい。