この5年ほど、ウェブ標準を主に牽引してきたのはHTML5の開発だった。そして、HTML5は10月末、ついにWorld Wide Web Consortium(W3C)勧告として公開された。それは、HTML5が完成し、開発が終了したことを意味するのだろうか。もしそうならば、HTML5の次には何が来るのだろうか。
確かに、HTML 5.0は完成したが、だからといって開発が終了したわけではない。HTML 5.1は、開発がかなり進んでおり、2016年には勧告されるはずだ。HTML 5.2の最初のワーキングドラフトは2015年に公開される予定である。要するに、HTML5の作業はしばらく続く見通しであり、筆者はHTML6がすぐに登場するとは思わない。
しかし、HTML5(たとえそれが、CSSなどの関連性はあるが別個の仕様も含む広義のバージョンであっても)の範疇に含まれないものが多数あることは明白だ。今後、それらの開発はどのように行われるのだろうか。そして、その新プロジェクトの名称は何になるのだろうか。
W3Cの最高経営責任者(CEO)であるJeffrey Jaffe博士は、HTML5とCSS3、JavaScriptが中核をなすオープンウェブプラットフォーム(OWP)の開発を継続するという解決策を提案した。Jaffe博士の提案は、アプリケーション開発の基礎となる「アプリケーション基盤」を提供して、開発者のニーズに応える、というものだ。つまり、オープンウェブプラットフォームは事実上、ウェブのOSになる。
W3C内部での話し合いや、9月にベルリンで開催されたExtensible Web Summitでの議論を基に判断すると、OWPは、セキュリティとプライバシー、コアウェブデザインと開発、デバイス間の相互運用性、アプリケーションライフサイクル、メディアとリアルタイムコミュニケーション、パフォーマンスとチューニング、ユーザビリティとアクセシビリティ、各種サービスの8つの基盤で構成される。
「それぞれの基盤は、すべてのアプリケーションで利用できるべきサービスと機能を集めたものだ。例えば、セキュリティとプライバシーの基盤には、暗号化や多要素認証、リソースの完全性などの機能が含まれる」(Jaffe博士)
各種サービスの基盤には、先頃この記事で取り上げたウェブ決済への取り組みや、注釈、ソーシャルウェブのデータ標準のほか、セマンティックウェブを包含する「ウェブ上のデータ」も含まれる。
Jaffe博士はブログ投稿の中で、これをOS開発にたとえた。OS開発は、低レベルの処理(メモリ管理やデバイスサポート)から始まるが、ネットワーキングやセキュリティ、グラフィカルユーザーインターフェースといった、より高レベルの機能も徐々に吸収していく。こうしたものが、新しいアプリケーションを構築する基盤になる。ウェブ開発者に対しても、同様の機能が標準として提供されるべきだ、と同博士は主張する。「今日のプログラム可能なオープンウェブプラットフォームを第1世代のウェブOSと呼ぶのは、うまいたとえだ」(同博士)