「API経済圏」という新基軸
密結合ではなく疎結合の部品同士の組みあわせで構成した方が、ビジネスの環境変化にあわせてシステムに柔軟性をもたらすことができる――。2005年前後から話題となったサービス指向アーキテクチャ(SOA)の考え方だ。
SOAは、Webサービスのインターフェース記述言語であるWeb Services Description Language(WSDL)でコンポーネントを組みあわせるなどしてシステムの柔軟性を高めるものとして期待された。だが、その複雑さからWSDLやSOAP(Simple Object Access Protocol)、CORBA(Common Object Request Broker Architecture)は普及することがなかった。
このSOAの柔軟性は、RESTful APIという形で蘇ったと表現できる。WSDLやSOAPのような“デジュールスタンダード”の複雑さがなくなり、ウェブ上に存在する、ありとあらゆるAPIでさまざまなライブラリやシステムがつながることで、かつてでは考えられなかったようなユニークなネットサービスが提供されるようになっている。
スマートフォンで提供される個人向けアプリは、さまざまなネットサービスのAPIの集合体とも表現できる。アイデア次第でAPIを組みあわせることで、これまでになかったサービスをスマホアプリとして提供できるからだ。こうしたことから注目されているのが“API経済圏”だ。
企業ITの世界は現在、IDCがよく使う“第3のプラットフォーム”をいかに使いこなすかが問われている。つまり、ソーシャル、(ビッグデータからの派生である)アナリティクス、モバイル、クラウドを上手く活用すべきという主張だ(第3のプラットフォームはSCAM、CAMS、SMACという言葉で表されることもある、要は順番が違うだけ)。
第3のプラットフォームに含まれるモバイルは、2007年の「iPhone」と2010年の「iPad」の市場投入以後、スマートフォンやタブレットは個人の行動パターンを大きく変えたと表現するのは大袈裟ではない。朝、目覚めてからまずするのはスマートフォンを見ることという調査もあるくらいだ。
このモバイルアプリは、先に触れたようにAPIなしには開発することができない。スマートフォンに搭載されたモバイルアプリはObjective-Cで書かれたネイティブアプリだとしても、そこに表示される情報はネット上のものであり、APIで呼び出しているものに過ぎない。こうしたことからも注目されるのがAPI経済圏だ。
さまざまなAPIを組みあわせることで、企業にとってそれまでになかったような利便性や新しいサービスを消費者に提供できる。重要となるのは、どんなAPIを組みあわせるかだ。商品やサービスを提供する企業であれば、その受益者である個人や企業に使い続けてもらえるようなモバイルアプリやネットサービスを考えるのであれば、APIの重要性が分かるはずだ。IT部門の出番である。