シュナイダーエレクトリックはフランスに本社を置き、ビルオートメーションなどを手掛ける「受配電&ビルディング」事業、電力のグリッドオートメーションなどを手掛ける「エネルギー」事業、ディスクリートやプロセスオートメーションなどを手掛ける「インダストリー」事業、情報システム用電源やデータセンター向け空調などを手掛ける「IT」事業の4分野を事業領域としている。
1月の2015年事業戦略説明会で代表取締役社長の安村義彦氏は「50年前から日本で製品を提供しているが、日本法人としての展開は4年前に再スタートを切ったところ。2015年度は(1)プロダクトからソリューションへ、既存ビジネスの強化、(2)事業部ごとに独立していた製品をどの事業部を通じても提供できるOne Schneiderの実現、(3)グローバル提供しているビジネスを日本で展開する、新規ビジネスの戦略的立ち上げ――という3つに取り組む」という方針であると説明した。
一元的に全製品を提供
シュナイダーエレクトリックは、2013年実績でグローバルに240億ユーロの売り上げがあり、本社がある欧州だけでなく北米、アジア太平洋地域、その他の地域と全世界で事業を展開している。「特徴は新興国に強いことで、売り上げの43%が新興国市場からあがっている」(安村氏)
日本市場については(1)既存ビジネスの強化、(2)One Schneider、(3)新規ビジネスの戦略的立ち上げという3つの事業戦略を掲げている。
シュナイダーエレクトリック 代表取締役社長 安村義彦氏
既存ビジネスでは、「UPS(無停電電源装置)のAPCなどのプロダクトは強いブランド力を持っているが、製品単体で販売するのではなく、サービスやサポートまで含めたソリューションとして提供していく」ことを計画している。
そのためにフィールドサービスを提供する体制を作り、定期点検や消耗品交換を行う予防保守、各種ツールで予知診断する予知保全、24時間365日ホットラインや緊急現地対応を行う障害修理、さらにオンサイト保守サービス契約、リモート監視サービスなども提供する。
事業戦略の2番目に掲げたOne Schneiderとは、「従来は所属する事業部以外の製品について顧客から問い合わせがあっても、それは対応できないとしてきたが、今後はシュナイダー製品であれば、どの事業部からでも提供できる体制を作る。専門知識については、該当事業部がバックエンドで支援することで対応する。これを実現するために、内部の報奨制度も含めて作り替えた。今後は全シュナイダー製品を提供できる体制でいく」と一元的に全製品を提供できる体制を指している。
個々の事業としては、2014年4月に産業向けプロセスオートメーションを提供するInvensysがグループ企業となったことから、2015年1月からインベンシスプロセスシステムがシュナイダーのプロセスオートメーション事業部、グローバルソリューションソフトウェア事業部となる。
ビルディング事業としては、既存の照明機器、空調設備、配電盤といった設備に無線リレー、無線コントローラ、電力計測などの設備を接続し、無線網を通じてPCやタブレットにエネルギーの活用状態を配信するビル管理システム「SmartStruxure Lite」を2013年5月に発表し、2014年6月にはエネルギーマネジメント事業者として認定されている。
データセンターについても、運用効率を最大限に高めるデータセンターライフサイクルサービス「DCLS」を2014年から提供開始。これは自社で開発したソフトウェアをベースとしたもので、ITベンダーが開発した競合製品とは異なり、ビル全体を管理している経験、ノウハウが取り入れられていることが特徴となっている。
ソーラー&ストレージ事業は2013年6月から開始した事業で、2015年には商業施設向け太陽発電機器、蓄電池を付属した太陽光発電システムの提供を予定している。
3番目の事業方針として掲げた新事業としては、デマンドレスポンス(DR)事業を行うことを計画している。すでに2013年11月に経済産業省実証事業として産業用DRが採択され、2014年6月からは日本国内にネットワークオペレーションセンターをオープンし、実証事業をスタートしている。
「この施設を日本よりも先にデマンドレスポンスを採用している韓国が見学に来たことから、当社の関連会社を通じて韓国でのDRが日本よりも先に開始する見込みとなっている」と新規事業開始に向けた準備を整えているという。