製造業や電力業界などを対象にしたシステムの普及を目指す任意団体「Virtual Engineering Community(VEC)」とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は3月9日、監視システムの運用にあたって、現場とクラウド間に発生する通信頻度や速度、量に現在のネットワーク機器が対応できるか調べる実証実験プロジェクトを、3月10日から開始すると発表した。
生産現場の効率化に必要な各種の技術要件を確認する。工場やビルなどの生産性向上や保全業務効率化をセキュアに実現できる環境「Industry 4.1J」を目指しての取り組みとしている。
近年、ドイツや米国などでは、インターネットを利用して現場の情報をパブリッククラウドに蓄積し、リアルタイムに分析、活用することで、商品の品質向上やエネルギー利用の効率化といった社会革新を目指す「Industry 4.0」を推進している。
だが、2009年ごろから制御システムを標的にしたサイバー攻撃の脅威が高まってきており、サイバー攻撃が恒常化する世界でクラウドと生産現場間を安全に接続することが大きな課題の1つとなっている。
こうした課題に対しVECでは、サイバー攻撃にも耐えられるセキュアな環境で監視や経営を実現することにより、現場の安全操業や運営のさらなる効率化を目指すことをIndustry4.1Jと表現している。
監視システムイメージ(NTT Com提供)
今回開始される実証実験の概要は以下の通り。
クラウド・現場間のセキュアな通信に必要な要件
・セキュリティ品質に優れた最新の通信プロトコル「OPC UA」の採用
OPC UAはOPC Foundationが2008年に発表したセキュリティ品質に優れた通信プロトコル。複数の工場の制御装置が相互接続する際の共通プロトコルとして開発された。このOPC UAを現行の制御装置に適用した場合でも正常に通信ができることを実験する。
監視システムの正常な稼働に必要な要件
・リアルタイムかつ大容量、高速な通信の実現
Industry 4.0では、システムでの異常検知や、現場データのクラウドへのミラーリングを、リアルタイムに実現することが望まれている。クラウドや制御システムに大容量かつ高速なデータを実際に流通させてみることで、クラウドと現場間で求められる接続構成と仕様を実験で確認する。
・クラウド上での監視システムの正常な稼働
VECの会員企業が提供する監視システムが、クラウドサービスであるNTT Comの「Bizホスティング Enterprise Cloud」上で稼働するか実験する。
・現場の施設・機械への監視システムの適用
実際に現場で運用されている制御ロジックを監視システムに組み込み、システムが正常稼働状況をシミュレートできるかどうかを調べる。また、異常の原因が、例えば機械のバルブの故障なのか、外部から侵入したマルウエアなのかをシステムが判断できるかどうかを実験する。
プロジェクトの成果を一般公開する。それを踏まえVEC会員が提供するサービスや、制御製品とNTT Comの「Arcstar Universal One」やBizホスティング Enterprise Cloudを組み合わせることで、日本国内や海外に多数の生産拠点を持つ企業に現場改善のための解決策を提供する。
またVECは、制御システムセキュリティ対策の企業向けeラーニング教育事業を4月にスタートすることで、今後のセキュアな製造現場の実現を担う人材育成についても取り組んでいく。