SAS Institute Japanは3月26日、「SAS Customer Intelligence」最新版の国内提供を開始した。Customer Intelligenceは、オムニチャネルマーケティングを実践するための新しいコンセプト「Customer Decision Hub」を実装した顧客分析と統合マーケティングのためのソフトウェア。既存3製品の最新版を中核に構成している。
Customer Intelligenceを構成する製品は、マーケティングオートメーション製品の「SAS Marketing Automation」、リアルタイム分析のためのミドルウェア製品「SAS Real-Time Decision Manager」、キャンペーンの実施を最適化するためのエンジン「SAS Marketing Optimization」の3製品。各コンポーネント間で緊密なデータ連携と統合管理をできるようにし、ユーザー企業がCustomer Decision Hubというコンセプトに沿ったオムニチャネルマーケティングを実践できるようにした。
SAS Institute Japan 執行役員 マーケティング本部兼ビジネス推進本部本部長 北川裕康氏
SAS Institute Japan Customer Intelligenceグループ ソリューションコンサルティング第一本部部長 小笠原英彦氏
執行役員でマーケティング本部兼ビジネス推進本部 本部長の北川裕康氏は「無数の人やモノ、モバイル、メディア、クラウドなどが相互につながったデジタル世界が当たり前になる。そうしたなかでマーケティングに取り組んでいく上では3つのポイントがある。一貫した顧客エクスペリエンスを提供すること、ROI(投資対効果)と価値について説明責任を持つこと、個々の顧客レベルでインサイトインテリジェンスを引き出すこと」と説明。新しいソフトウェアは、これらのポイントに応えられると強調した。
ソリューションコンサルティング第一本部Customer Intelligenceグループの小笠原英彦氏は、オムニチャネルマーケティングについて、消費者の商品選択行動が大きく変わってきている例として、マルチデバイス化が進んでいることを挙げた。
ある調査によると、購入前にスマートフォンを使って商品を調査する割合は全体の65%で、そのほかにもPCが25%、タブレットが11%存在している。顧客ニーズは多様化し、タッチポイントも増加するなか、従来のようなマルチチャネルやクロスチャネルのマーケティングでは、十分な顧客体験を提供できなくなったという。
ここでいうマルチチャネルは、それぞれの顧客ごとに複数のタッチポイントを複数設けるもの。対するクロスチャンネルは1人の顧客に対し複数のタッチポイントを提供するが、オペレーションはそれぞれ分かれているものだ。オムニチャネルは、1人の顧客に対し統合したタッチポイントを提供しシングルビューで管理するものになるが、小笠原氏によると「現状は“真”のオムニチャネルに至っていない」ケースも少なくないという。
「顧客サービスの一環として提供され、タッチポイントもウェブと店頭の相互送客など限られた取り組みになっている。システム的にもチャネルを統合するのではなく、インターフェースで連携させるものが多い。“真”のオムニチャネルでは、顧客経験価値を最大化しファン化することを目的に顧客のすべてのタッチポイントを統合的なチャネルにし、さらに、現場レベルでチャネル横断のビジネスシナリオを描けるようなシステムが求められる」(小笠原氏)
オムニチャネルマーケティングの機能要件としては5つあるという。
1つめは、顧客タッチポイント情報を一元管理し「カスタマーシングルビュー」を提供すること。2つめは、顧客のライフスタイル分析やレコメンド、商品成約までの予測モデル、イベント検知といった高度な分析を行う「分析エンジン」。3つめは、インバウンドとアウトバウンドのアプローチを含め、チャネルを横断してシナリオの設計と管理ができること。4つめは、顧客からの問い合わせといったインバウンドニーズが発生したときに、リアルタイムでオファー出せること。5つめは、限られたリソースを使って、どのオファーにどのくらいを割り当てるべきかをコントロールできることだ。
Customer Decision Hubは、こうした機能要件を満たし、すべてのチャネルを効果的に管理してROIを最大化するためのプラットフォームのコンセプトとなる。
3つの中核製品のうち、Marketing Automationでは、顧客ごとの属性や購買行動の変化をデータウェアハウス(DWH)上で検知し、販売チャンスのある顧客に自動でキャンペーンを実施する。Real-Time Decision Managerは、顧客がチャネルに接触したタイミングで顧客のコンテクスト(接触内容)を読み、チャネルをまたいでリアルタイムレコメンドを実施する。Marketing Optimizationでは、誰に、どの商品を、どのチャネルから勧めれば、顧客の反応率やマーケティングROIを最大化できるかを自動で計算する。
「最新版の6.4では、マーケティングのPDCAサイクルに必要なすべての機能をシングルプラットフォームで実現した。PDCAサイクルの中でメタデータを一元管理していることが大きな特徴。データの収集、統合からデータ蓄積、マイニング、レポート・BI(ビジネスインテリジェンス)を1つのGUIで一貫して行うことができる。DWHとBIなど機能間をつなぐためのインターフェースを開発する必要もない」(小笠原氏)
会見では、銀行でのオムニチャネルマーケティングの例も実演された。デモでは、顧客が投資のために口座に資金を振り込んだことを検知して、スマートフォンにキャンペーンの告知をポップアップ通知し、地図上で営業店舗を確認した顧客が、実際に営業店舗に相談に出向くところまでをビジネスシナリオとして設計できることを説明した。その際には、単に振り込みを検知するだけではなく、顧客の振込額や余剰資金の額、運用相談のニーズの可能性などをリアルタイムに計算して、顧客のコンテキストに即した施策が打てるとした。
Customer Intelligenceのアーキテクチャと機能