京都府の福知山市は、仮想デスクトップ(VDI)を導入し、市内42拠点で使用されている約1000台のPCを仮想デスクトップ環境に移行した。この環境により、2013年と2014年に発生した水害時でも短時間でシステムを再開し、市民への迅速な現場対応を実施できたという。
また、仮想デスクトップによりPCの管理工数を大幅に削減できたことで、本来の業務であるIT戦略の立案や遂行にさらに注力できるようになったとのこと。システムを提供したヴイエムウェアが5月28日、ユーザー事例として公開した。
福知山市では、市町村合併に伴って職員の使用するPCの管理工数が増大し、またIT担当者が管理する範囲がより広くなったため、PC管理にかかる負荷が限界を迎えていた。また、福知山市は従来から水害の多い地域だったこともあり、河川の氾濫などの災害時でも市民サービスを継続できるIT環境の整備が求められていた。
これらの課題を解決するため、福知山市では仮想デスクトップソリューションの導入を決定し、2010年にまず約15台のPC端末環境に、ヴイエムウェアの「VMware Horizon」を基盤とした仮想デスクトップを導入した。
ところが、追加で約200台のPC端末環境に仮想デスクトップを拡張したところ、規模の拡大に伴うパフォーマンス劣化の問題に直面した。市のIT担当者では問題点を特定できず、ソフトウェアのアップデート時には仮想デスクトップがフリーズするなど業務にも大きな支障が出ていたという。
このパフォーマンス問題は、ヴイエムウェアのプロフェッショナルサービス(PSO)のコンサルティングサポートにより、運用面やハードウェア面での課題とパフォーマンスを改善することで解消された。
また、PSOのサポートにより、福知山市のIT担当者がVDI環境の正しい運用方法や改善策などのノウハウを獲得できたことや、将来のハードウェア拡張に向けて、適切なシステム拡張計画を策定できたことなどから、最終的には全庁で約1000台の仮想デスクトップが導入された。
仮想デスクトップへの移行により得られた主な効果は以下の通り。
- PCの管理工数が大幅に減ったことで、IT管理者が本来の業務であるIT戦略の立案や遂行に注力することが可能になった
- 災害時や組織変更時でも極めて短時間でデスクトップ環境を準備・提供可能
- シンクライアント端末だけのシンプルな業務環境を実現
なお、福知山市では2013年と2014年に水害が発生、出先機関の多くの端末が水没するという被害があったが、VDI化していたおかげで水没した端末を入れ替えるだけで、通常時と同様にシステムを再開でき、被災した市民への迅速な対応が可能になったとのこと。
市では今回の導入による成果を踏まえ、今後さらなるリスクマネジメント能力の強化に向け、「VMware vCenter Site Recovery Manager」による災害対策システムの導入を検討しているという。また、職員が自宅のPCやタブレットを活用して業務するためのデスクトップ環境の導入を検討するなど、ワークスタイルの変革も目指している。