Ubuntu Linuxの開発を支援するCanonicalは、フリーソフトウェアを配布する他の企業や団体から、オープンソースのライセンス条項をめぐりたびたび批判を受けてきた。こうした状況を改善するため、Canonicalはフリーソフトウェア財団(FSF)とSoftware Freedom Conservancy(SFC)の支援を受け、米国時間7月15日にライセンス条項を一部修正した。これを受け、FSFはCanonicalの知的財産権に関する修正後の条項が、GNU GPL(General Public License)をはじめとする各種フリーソフトウェアのライセンス条項に準拠したとの声明を発表した。
Canonicalは10年以上前に創業されて以来、一部のLinuxユーザーから常に不信感を抱かれて続けていた。Ubuntuは、Debianから派生したディストリビューションだ。たとえば、同社は2009年7月にAffero GPLでソースコードを公開するまで、Launchpadをプロジェクトのホスティングソフトウェアとして5年以上にわたり使い続けた。Affero GPLは、ユーザーがSaaSとして使用しているプログラムのソースコードをダウンロード可能な形で提供することを求めている。
そして近年、Canonicalのライセンス条項は、一部のデスクトップLinuxディストリビュータとの間で激しく対立する話題となってきた。まず、CanonicalはUbuntuリポジトリからのパッケージ配布をめぐり、Linux Mintに対しCanonicalのライセンス条項に署名するよう迫った。また、当時Kubuntuプロジェクトを率いていたJonathan Riddell氏とライセンス条項をめぐって1年半にわたる争いを繰り広げ、結果としてRiddell氏はKubuntuプロジェクトのリーダーの座を追われることになった。
今回、FSFおよびSFCとの協議を通じてCanonicalはライセンス条項を一部修正し、「Ubuntuは数多くの創作物の集合体であり、各創作物には各自のライセンス条項が適用され、それらのライセンス条項で許諾される権利が、Ubuntuのライセンス条項により修正または制限されることはない」という主旨の条項を追加した。この件に関し、Canonicalの最高経営責任者(CEO)であるJane Silber氏は、Ubuntuのライセンス条項に関する誤解を払拭するため、条項を追加または修正することにやぶさかではなく、今後もライセンス条項の改善に努めていきたいと述べている。
一方のFSFは、今回の修正は重要な前進であるとしながらも、完璧な解決策だとは考えていない。FSFによると、GNU GPLで許諾されているユーザーの権限が制限されたり、Ubuntuを構成する各創作物のコピーレフトが阻害されたりするという喫緊の問題は、今回の修正によって解決されたが、Ubuntuのライセンス条項には未解決の問題がまだ残されているという。そのため、FSFは今後もCanonicalに対し、GNU GPLを尊重し、フリーソフト開発者への訴訟を目的とした著作権の濫用を控え、商標権に関する条項を明確化し、商標や著作物利用の自由度を改善し、コピーレフトを阻害しないよう求めていく方針である。
なお、今回の件を誰もが諸手を挙げて歓迎しているわけではない。前出のRiddell氏は自身のブログの中で、ユーザー達の不安は完全には払拭されておらず、今後大きく進展することも期待できないという、否定的な見解を述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。