Barack Obama米大統領は米国時間7月29日、スーパーコンピュータの研究開発を推進する新たな大統領令を発令した。この大統領令は、世界初となるエクサ級スーパーコンピュータの研究開発に専念する「国家戦略コンピューティングイニシアチブ(NSCI)」を立ち上げ、高性能計算(HPC)分野における将来的な米国の地位強化を目指すもの。このイニシアチブは、エネルギー省、国防総省、国立科学財団の協同で推進され、必要に応じて産学の協力も要請するとしている。
Obama大統領は、コンピュータの性能向上に対する需要の増加に対応し、米国の経済成長を維持するうえで、超高性能の次世代型コンピュータが必要不可欠だと考えている。また今回の大統領令は、エクサ級スーパーコンピュータの研究開発を通じた、政府機関、民間企業、教育機関の連携促進も狙っている。さらに、現在の半導体技術は間もなく性能向上の限界に達するとみられているが、新たに立ち上げられるNSCIには、「ムーアの法則」後を見据えた新技術の開発も期待されている。
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エクサ級スーパーコンピュータが実現した場合、その計算速度は1エクサフロップスに達する。これは1秒間に100京回の浮動小数点演算を実行できることを意味し、現存するスーパーコンピュータの数十倍から100倍にも達する性能である。アメリカ航空宇宙局(NASA)、米連邦捜査局(FBI)、米国立衛生研究所、米国土安全保障省、米大洋大気庁など、エクサ級スーパーコンピュータの多大な恩恵を受けると予想される政府機関は、イニシアチブに積極的に関与していく姿勢を見せている。
ただし、このような超高性能のスーパーコンピュータを実現するには、現在のコンピュータの動作原理を刷新する画期的なアーキテクチャと、膨大な開発資金が必要だ。加えて、エクサ級スーパーコンピュータの実現にあたっては、消費電力の問題を解決する必要がある。IEEE Spectrumによると、単に現行のアーキテクチャを拡大してエクサ級スーパーコンピュータを構築した場合、その消費電力はギガワット級の原発1基分に相当するという研究者もいる。
スーパーコンピュータ開発企業Cray Inc.のシニアVP兼CTOであるSteve Scott氏は、サイエンス系ニュースサイトIEEE Spectrumの取材に対して、「エクサ級スーパーコンピュータの構築は明日にでもできるかもしれないが、現状の技術では費用と消費電力の面から現実的ではない」と述べている。
このように数々の困難が予想される中、NSCIの委員会はエクサ級スーパーコンピュータの具体的な開発計画を90日以内に提出するよう求められている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。