ERPなどのソフトウェア保守サービスをベンダーの半額で手掛ける米Rimini Streetが、日本での事業強化に乗り出した。果たしてソフト保守サービス分野で“破格”の変革は起きるか。
ソフト保守料“半額”でOracleやSAPに対抗
「日本での今年の売り上げ規模は前年比3倍になる見込みだ」――こう語るのは、ソフト保守サービスの独立系プロバイダーであるRimini Streetの最高マーケティング責任者(CMO)を務めるDavid Rowe氏だ。このほど来日し、日本法人である日本リミニストリートの脇阪順雄カントリマネージャーとともに筆者の取材に応じた。
Rimini Streetは2005年に創業した「第三者ソフトウェア保守サポート」の草分けで、現在グローバルで1150社の顧客を持つ。日本へは2014年3月に本格参入し、これまで1年半余りで45社の顧客を獲得。今年9月に、SAPジャパンで18年間勤務し要職を務めてきた脇阪氏を日本法人の代表に迎え入れ、日本での事業強化に乗り出した。
同社が現在、ソフト保守サービスを提供しているのは、SAPの「Business Suite」「Business Objects」、Oracleの「E-Business Suite 」「Siebel」「PeopleSoft」「JD Edwards」「Hyperion」「Oracle Retail」「Agile PLM」「Oracle Database」の10製品。いずれも広く普及しているものばかりだ。その費用は、ユーザー企業がOracleやSAPに支払っている年間料金の半額。この破格ぶりが同社サービスの最大の特徴である。
さらにRowe氏によると、「ベンダーが提供するソフトを10~15年間使い続けると、年間保守料金のほかにアップグレードやカスタマイズの保守、そして保守要員の費用がかさんでくる。これに対し、当社のサービスを同じ期間利用していただければ、全体で最大90%の費用削減を図ることができる」という。
大きな潜在市場の10%獲得に向けて
ちなみに同社のサービスでは、バージョンアップがなく、対象となるソフトを最大15年間サポートする。これによって、ユーザー企業はこの間、ベンダーからアップグレードを強制されることがなくなるわけだ。
一方、破格ながらも高品質なサービスであることも強調している。具体的には、経験豊富なサポートエンジニアによる迅速なサービスを24時間365日にわたって利用できるほか、サービスに関してISO27001およびISO9001:2008の品質認証を取得している。
こうしたRimini Streetのサービスがユーザー企業に受け入れられつつある背景には、同社によると、OracleやSAPのソフト保守料が高すぎるとユーザー企業の間で不満が高まっている状況があるという。それでも長らく状況が変わらなかったのは、市場に競争がないことからユーザー企業には選択肢がなく、両社の言うがままに従わざるを得なかったからだとしている。
ではRimini Streetにとって、潜在市場はどれほどの大きさがあるのか。Rowe氏によると、同社が対象としている10製品に企業が年間保守料として支払っている推定総額は、グローバルで300億ドルに上るという。ちなみに同社の2014年の売上高は1億ドル弱。「潜在市場の大きさから見ると、われわれはまだ表面を少しだけひっかいている程度にしか過ぎない」と同氏は表現した。
日本市場ではどうか。脇阪氏によると、10製品のうちOracle Databaseを除いたアプリケーション群としてRowe氏と同じ意味の推定総額でおよそ1500億円。日本ではOracle Database向けのサービスをまだ本格的に手掛けていないことから、この数字が対象になるという。そのうえで両氏は、グローバルでも日本でも推定総額の10%獲得を目指したいとしている。
年間保守料で半額、10年以上利用し続ければ全体の費用を最大で90%削減することができるというRimini Streetのソフト保守サービスは、果たしてこの分野に破格の変革を巻き起こすことができるか。注目しておきたい。
米Rimini StreetのDavid Rowe CMO(左)と日本リミニストリートの脇阪順雄カントリマネージャー
(編集部注:現在、米OracleはRimini Streetの営業停止などを求めて訴訟を起こしており、10月13日の判決ではOracleが勝訴している。 関連記事)