松岡功の一言もの申す

「コグニティブ」は広く“認知”されるか

松岡功 2015年11月26日 14時38分

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 「コクニティブコンピューティング」と呼ぶAI(人工知能)領域のテクノロジに注力するIBM。「コグニティブ」は「認知」という意味だが、果たして広く“認知”されるか。

400社を超えるパートナー企業とエコシステムを形成

 「世界は今、かつての産業革命、コンピュータ革命に続く第3の技術革新の時代を迎えている。ビッグデータによるデジタル化がもたらす“情報革命”がそれだ。この革命では情報を分析して生み出すナレッジをいかに活用していくかがカギとなる。それを支えるのがコグニティブコンピューティングである」

 米IBMでWatson事業を推進するMike Rhodin シニアバイスプレジデントは先ごろ、日本IBMが開いたコグニティブコンピューティングに関する会見でこう語った。


右から、日本IBM代表取締役社長のポール与那嶺氏、
米IBMシニアバイスプレジデントIBM Watson事業担当のMike Rhodin氏、
日本IBM執行役員ワトソン事業部長の吉崎敏文氏、同執行役員研究開発担当の久世和資氏

 コグニティブコンピューティングとは、人間が話す自然言語を理解し、根拠をもとに仮説を立てて評価し、コンピュータ自身が自己学習を繰り返してナレッジを蓄えていくことができるテクノロジを活用したコンピューティングの新しい概念である。IBMは今、その代表的なサービスである「Watson」の普及拡大に注力している。

 その事業責任者であるRhodin氏によると、Watson関連のプロジェクトは現在、世界30カ国以上で17の産業分野を対象に進行しており、400社を超えるパートナー企業とエコシステムを形成しているという。日本では現在、ソフトバンクと共同で日本語化を進めており、来年には日本語でのWatson活用が可能になる見通しだ。

 Rhodin氏はさらに、「コグニティブコンピューティングを具現化するWatsonが目指しているのは、まさしくお客様のビジネス革新を支援することだ。そのためにWatsonで具体的にどのようなことができるか。このテーマにIBMは全社を挙げて取り組むとともに、多くのパートナー企業と一緒になってアイデアを創出していきたい」と強調した。

「コグニティブに馴染んでほしい」と説く日本IBM社長

 会見の質疑応答で興味深いやりとりが2つあった。まず1つは、「およそ50年前に登場した当時のSystem/360と今回のWatsonを比べると、世の中に与えるインパクトとしてどちらが大きいと考えるか」という質問だ。これに対し、Rhodin氏は次のように答えた。

 「System/360はプログラムが自在にできる汎用コンピュータの市場を切り開き、あらゆる業種業態の企業がバックオフィスとしてコンピュータを利用するきっかけになった。一方、今回のWatsonに代表されるコグニティブコンピューティングはバックオフィスにとどまらず、フロントオフィスをも革新するものになる」

 「なぜかといえば、コグニティブコンピューティングはAIをさらに進化させて全く新しい“人とコンピュータのパートナーシップ”を促し、これまでどちらか片方だけでは解決できなかった問題が解決できるようになるからだ。これはコンピュータだけでなく人間そのものの歴史においてもまさしく画期的なことだ。ただ、System/360とは時代背景も性質も異なるので、どちらのインパクトが大きいかについてのコメントは差し控えたい」

 Watsonに対するIBMの力の入れようを探る“曲玉”の質問だが、「コンピュータだけでなく人間そのものの歴史においてもまさしく画期的」とのコメントに同社の見解が明確に表れていた。

 もう1つ、質疑応答で興味深かったのは、「コグニティブという多くの人に馴染みがない言葉を、IBMは今後も使い続けるのか」という質問だ。これについては、Rhodin氏とともに会見に臨んだ日本IBMのポール与那嶺社長が次のように答えた。

 「IT分野では技術革新とともに新しい言葉が頻繁に出てくるが、最初はどれも馴染みがない。ただし、コグニティブコンピューティングは第3の技術革新の時代を象徴する言葉になると確信している。したがって、ぜひともコグニティブという言葉に馴染んでいただきたい」

 もちろんIBMとしてはそう主張したいだろうが、例えば「クラウド」のように時代を象徴する言葉は、複数の有力なベンダーやユーザー、公共機関が使うようにならないと普及しない。果たしてコグニティブという言葉のその意味と同じく、広く“認知”されるものになるか。注目しておきたい。

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